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※アスカガ学パロ(高校生・幼馴染)
『つつゐづつ』 6-1
金曜日の三時間目は、保健体育の時間だった。
アスランはクラスメイトと談笑しながら、カガリが他の女子生徒と共に、教室から出て行くのを横目で見ていた。
そのカガリがこちらを振り返る。見ていたことが気がつかれないように、すかさず目を逸らす。カガリの視線が当たる右の頬が、じりじりと焼け付くようだった。
あれから、カガリといつものように接することができなくなっている。
アスランが態度を軟化させれば、また元通りになれるかもしれないとは思う。
だが、アスランは気がついてしまったのだ。自分を誤魔化し続けることが、いかに不毛であるかということを。
小さい頃に流行った遊びを思い出す。
幼いアスランは、カガリを守る役目がやりたくて仕方がなかったけれど、陰ながら惚れた女を守るなんて、俗物のアスランにはできなかった。
(ずーっと、ごっこ遊びをしていたんだな……)
本当は、二人が子供のように安らかにいられた小さな箱庭が、窮屈で仕方がなかった。今更、身体を小さく縮めながら箱庭に居続けたとしても、下心を意識したアスランには『幼馴染ごっこ』を続けられそうにない。
女子生徒の甲高い声――女の子という生き物は、どうして何かあればお喋りするのだろう――が遠のいていくのを感じて、アスランは緊張を解いた。
自分でも逃げているな、と思う。だが、向き合えば、カガリを追い詰めてしまう。
(もっと、上手くやれると思っていたのに……)
自分の見通しが甘かったことに、アスランはもう何度したか分からない溜息を吐くしかなかった。
「おい。アスラン。カガリがこっち見てたぞ」
煩わしいことに、クラスメイトがわざわざ教えてくれる。
「そうだった? 気がつかなかったな……」
自分でも白々しいと思いつつも、心の中でだけ「知ってるよ」と呟く。
「なんだよ。喧嘩でもしたのか?」好奇心の裏に、僅かな期待が覗く声色だった。
アスランは、曖昧に笑っておくことにした。こうすれば、勝手に都合よく解釈してくれるから。
以前、このクラスメイトに、カガリとのことを聞かれたことがある。恐らく、彼はカガリに気があるのだろう。付き合っているのかという問いに、曖昧に微笑んで返した。その裏には、カガリがお前などを好きになるものかという傲慢さと、俺がカガリの特別なのだという優越感があった。
だが、本当は、アスランが男扱いされていないだけだ。
(……馬鹿だな、俺)
無意識ではあったとは言え、クラスメイトを馬鹿にしてしまったことが後ろめたい。自分が一番、馬鹿なのに。
自分の愚かさが、ひどく惨めだった。
モドル≪ ≫ススム
【あとがき】
同じ時間軸を違う視点で書いたので、ペースが落ちてしまった……。