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※ アスカガ・現代日本風大学生・幼馴染。
『プレゼント ~ From Cagalli To Athrun ~』 (1)
「あー……。もうすぐ、アスランの誕生日だ」
手帳の月間スケージュールを見て、カガリは呟いた。
今年は、何を贈れば良いのだろう、と思う。
「やっぱり、つき合いだしたんだから、何か特別なものをあげた方がいいのかなあ……」
と、そこでカガリは気がついたのだが、アスランにプレゼントを買うほどお金があるのだろうか。秋の行楽シーズンに、友人と旅行に出かけて、かなりの散財をしてしまった。
財布や預金を調べてみたのだが、次のアルバイト代が出るまで生活するのに必要な金額を残すと、大したものは買えそうにない。
そして、よくよく考えれば、カガリが今までアスランにあげた誕生日プレゼントは、かなりけち臭いものばかりだった。
子供の頃、カガリの家では、月々のお小遣いを、前月の月末にもらうことになっていた。しかし、アスランの誕生日は、お小遣いが手に入る二日前の二十九日。当然、カガリの手元には、ほとんどお金が残っていない。
アスランにあげたプレゼントを思い出すと、たまたまポケットの中に入っていたキャンディー、雑誌についていたいらない付録、もう使わなくなったペンと、なかなか気前の良いプレゼントばかりであった。
「あ~~~。どうすれば、いいんだよう……」
毎年、アスランは、カガリのことを考えてプレゼントをしてくれたのに、どうしてカガリは、自分の都合しか考えていないのだろう。
はあ……と、カガリは大きな溜息を吐いた。
「おはよう。カガリ」
バス停でバスを待っていると、アスランが声をかけて来た。今日は、アスランも一限から講義があるらしい。
「あ、おはよう……」
「ん……? どうした? 体調悪いのか?」
「ううん。ちょっと、疲れているだけ。あんまり眠れなかったし……」
昨夜は、アスランのプレゼントを考えていて、悩み疲れてしまった。
「……そうか。最近、急に冷え込んだからな。体調管理に気をつけないと、風邪を引くぞ」
「うん」
こういう、アスランの育ちの良い優しさが、好ましいと思う。
そこで、カガリは、母親にアスランに伝えるように言われた伝言を思い出した。
「あのな、お母さんが、たまにはうちにご飯を食べにいらっしゃいって」
「いつ?」
「月末の土曜か日曜」
今年のアスランの誕生日は、金曜日であるから、カガリの母はその近くの休日と考えたらしい。
「大丈夫だよ。どっちも予定は、空いてる。そういえば、カガリの家でご飯をごちそうになるの久しぶりだな……」
アスランの父親は単身赴任で、母親も仕事で家を留守にすることが多かった。そのため、夜子供を一人にするのは危ないということで、ご近所の誼で、ヒビキ家がアスランを預かることがあった。
いつ来ても、アスランはきちんと挨拶をして、礼儀正しかった。お客様なのに、カガリやキラ以上にお手伝いをしていた。そういう、決して大人に甘えようとはしない、頑なな子供だった。
カガリの母親が褒めるから、アスランは嬉しそうに、お手伝いをしていたけれど、本当は誰に一番褒められたいのか、カガリはよく知っていた。
「小父さまと、小母さまは? 土曜も日曜もお留守なのか?」
「うん、相変わらず忙しいみたいだ」
アスランはそっけなく返した。カガリには、それが、誰もが一つは持っている子供の頃の傷跡を、彼の高い自意識が覆い隠そうとしているように感じた。ぎゅうっと腕にしがみつくと、「どうした?」とやさしい瞳で覗き込まれ、その澄んだ緑の美しさに胸が締め付けられてしまった。
「一人だからって、ちゃんと栄養とらなきゃダメだぞ」
全く可愛くない言い方だった。だが、自尊心の強い彼には、判りやすい労わりや同調が不要なことが分かっていた。こんなだから、女らしくないと言われるのかもしれないと思っていたら、腕を解かれた。滅多に人前でいちゃついたりしない二人だったから、腕に抱きついたりしてうざったかったのかもしれない。
だが、カガリの予想に反して、「もう、俺も大人だから大丈夫だよ」というやさしい声が降ってきて、骨ばった大きな手がカガリの手を握った。
その瞬間、カガリの中で、アスランへのプレゼントが決まった。
(2)へとツヅク
【目次】