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※ アスカガ・現代日本風大学生・幼馴染。
『プレゼント ~ From Cagalli To Athrun ~』 (2)

 



 十月三十日、午後六時。
 アスランは久しぶりに幼馴染の家を訪れていた。
 以前は、頻繁に行き来していたのだが、中学に入った辺りから、アスランも自分のことは自分でするようになり、次第に足が遠のいてしまったのだった。また、年齢の高まりと共に、幼馴染の双子と遊ぶ時は、親が不在で、自由に羽の伸ばせるアスランの家か、外で遊ぶことが多かった。
 カガリと付き合いだしてから訪問するのは、初めてだった。
 一応、互いが互いの両親に、付き合いだしたことだけは報告したのだが、時々、親に言えないような疚しいこともしているので、なんとなく気まずい。
 ――今日、小父さんはいらっしゃるだろうか?
 これもまた、なんとなくだが、母親よりも父親と対面する方が、緊張する。
 カガリは、全く平然としていたが、こういう時に緊張するのは男の方だけなのだろうか。
 アスランは、緊張を押さえ込んで呼び鈴を押した。
 暫くして、賑やかに出迎えたのは彼らの母親だった。
「あらまあ。アスラン君。久しぶりねえ。キラにもカガリにも、連れていらっしゃいって何度も言ってるのに、ちっとも連れて来ないんですもの。おばさん、寂しかったわ~」
 自分の母も、年のわりに若く見える性質だったが、カガリとキラの母親は、昔以上に少女めいた華やかさを持っていた。尤も、そう見えるのは、アスランがそれだけ大人びたからかもしれない。
 小さい頃に何度もお世話になったのに、たまに道ですれ違っても会釈をするだけで、不義理が過ぎた自分を反省した。
「すみません。ご無沙汰しております。今日は、ご馳走になります」
「さっき天婦羅が揚がったところよ。どうぞ、ゆっくりしていって」
 にっこりと微笑んで、玄関からリビングまでアスランを先導して歩く。その彼女のぴんと伸びた背筋が、カガリの後姿を思い出させた。
 彼女の髪や瞳の色はキラに受け継がれているが、顔立ちは、女だからか、カガリの方が似ている。声も、電話越しであれば、カガリか母親か、どちらか判断できない時があった。
 ――カガリも、あと二十年ぐらいすれば、小母さんのようになるのだろうか。
 思いもかけずふと過ぎったその想像は、アスランの頬を緩ませた。

 


 リビングには、カガリとキラ、そして彼らの父親がいた。
 和やかに「いらっしゃい」という双子に対し、何故か、父親は、新聞を読むことに没頭している。
 ――やはり、小父さんは怒っているのか?
 自分の心の持ちようかもしれないが、素っ気無い態度を取られているように見えて、身構えてしまう。
「さあ、さあ、はやく座ってちょうだい。天婦羅が冷めてしまうわ」その呼びかけで、皆は席に着くことになった。
 信楽の大皿には、色とりどりの天婦羅が載せられている。
「わー! 天婦羅おいしそう!」と、キラが目を輝かせると、
「駄目よ、キラ。今日は、アスラン君が主役なんだから、まず、アスラン君が好きなものを取ってから」と母親が嗜める。
 アスランがカガリの隣に座ると、これが海老だの、椎茸だのと、母親が説明してくれる。どれでも良いとアスランが言うと、キラが嫌いな椎茸ばかりをアスランの皿にいれようとしたが、家族全員に怒られ、アスランの取り皿には全種類の天婦羅が載せられ、小さな山を築くことになった。キラの取り皿にも、きちんと椎茸の天婦羅が載せられている。
 むすっと拗ねたキラに、母親が大学生にもなって好き嫌いは駄目だと言い聞かせた。
 自然と、アスランの顔も綻んでしまう。
「カガリの家って、なんかいいよな……」
「え? そうか?」
「うん。にぎやかでさ……」
 大皿に盛られた揚げたての天婦羅。箸休めのもずく酢。具だくさんの味噌汁。南瓜の煮つけ。金平牛蒡。すまし仕立てのロールキャベツ。
 にぎやかな食卓の真ん中に、アスランが選んだものがある。――黄色い小花模様の醤油差し。
 カガリの欲しがっていたものをあげたいとは思っていたけれど、もしかしたら、この輪の中に入りたいという自身の願望が、無意識に出てしまったのかもしれない。
 まず、味噌汁からいただこうとすると、カガリの白地に黄と橙の水玉のものとおそろいで、、黄緑と濃い緑の水玉の湯のみと茶碗があった。味噌汁の椀と箸は同じこげ茶の木目のもので、若干アスランの箸の方が大きい。
「これって……」
 ちろりとカガリの方を窺うと、黙々とつゆに海老の天婦羅を泳がせていた。心なしかその頬が赤い。
 なんだか、カガリの家族になったようだった。
 幼い頃は、カガリやキラが羨ましかった。雑多で、うるさくて、でも一つに完成された調和がそこにあった。
 自分の家には、そんなものはなかったし、カガリやキラの家族が作り出す和の中では、アスランはいつもお客様だった。
 今はもう、大人だから、このことで胸がいたんだり、傷ついたりはしないと思っていたが、カガリのそばにいると、こうして時折、感受性が強い子供のように無防備になってしまう。そして、カガリは、その剥き出しの心を真綿でくるむように抱きしめてくれるのだ。
 うれしかった。単純に、ありがたいと思った。
「いただきます」
 手を合わせてから、椀に箸を付ける。昔に馴染んだ味がした。
 アスランも自炊はするが、栄養を摂取するために自分で作ったものと、他人に作ってもらったものとでは、やはり心持が違う。
 久しぶりの家庭の味をゆっくりと味わっていると、カガリの母が、にこにこと笑いながら言った。
「あら、夫婦茶碗なのね。ふふ……」
「ぶづっっっっ! ごふっっ! こほっ! ごほ、ごほ! …………スミマセン」
 熱い味噌汁で咽たアスランに、キラは汚いとぎゃあぎゃあ騒いで、カガリはアスランをからかった母親を嗜め、母親はあらまあ大変と布巾を取りに席を立った。
 ごちゃごちゃとした喧騒がのぼる食卓で、独り取り残されたカガリの父が、ぽそりと呟いた。
「まだ、嫁にはやらんぞ」





(1)にモドル  

【目次】













【あとがき】
や、やばい! ネットに繋がらなくて、29日に間に合わないかと思った!!!
これからは、予約投稿という手段を使おうと思います。

おめでとう、アスラン!! これからもカガリとお幸せにね!



 

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今更ながら、種ガンで二次創作。
いつかは、サイトになるはず……

だったけど、なりませんでした。
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