種ガンダム(主にアスカガ)のブログサイト
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※アスカガ・パロディ (週に一度は、彼女のアパートで過ごすことにしている。)
『おおかみとこやぎ』
小さなこどもが、額にお面を付けて、にかりと笑っている。お面の白い動物の絵は拙く、いかにも幼児が描いたものであった。
「これは、何の写真?」
それは彼女が幼い頃のアルバムの一枚だった。
写真を貼った人――彼女の両親は、几帳面なたちだったらしい。『二月五日、カガリ、幼稚園の発表会にて準主役』というメモも一緒に挟まれている。
「ああ。幼稚園で『十四匹の小山羊』の劇をやった時のだ」
「『十四匹の小山羊』?」
「元は『七匹の小山羊』って話だよ。七匹だと役にあぶれる子がいるから、増やしたんだ」
それから、彼女はあらすじを説明した。
「準主役って書いてあるけど……」
「二倍に増えたから、主役の賢い小山羊も二倍。ちなみに狼は三倍」
悪い狼をやっつける小山羊の役が、どうしてもやりたくて、立候補したんだ。
そう言って、こどもの頃から変わらない笑顔でにかりと笑った。
*****
――とん、とん、とん。おかあさんですよ。ここをあけておくれ。
とをたたいたのは、ちょーくをほおばり、こえをたかくしたおおかみです。
こやぎたちは、おかあさんのいいつけどおり、おおかみにまえあしをみせるようにいいました。
金曜の夜は、いつも彼女のアパートで過ごすことにしている。
アスランは、玄関のチャイムを鳴らした。待ちきれないと、パタパタと軽く忙しない足音が近づいてくる気配に、どうしても口元が緩む。
鍵を開ける音が止むと、勢い良くドアが開いた。
「アスラン! お帰り!」
「こら! きちんと、確認しろと言っただろう? 変な奴だったらどうするんだ」
全く、反省していない様子で、「だって……」と彼女は言った。全幅の信頼を寄せる笑顔だ。
「仕方がないやつだな……」
口ではそう言いながら、自分の言葉に説得力がないことは分かっていた。それは彼女にも伝わっていて、だから、彼女も改めることがないのかもしれない。
だって、彼女が言うのだ。――お帰り、と。
アスランのおとないを待ちわびた顔で、いらっしゃいではなく、「おかえり」と。
細い腕が首に絡んでくる。そうなると、何とか作ったしかつめらしい表情は消え、我を失ったように彼女の愛らしい唇を貪ってしまうのだった。
獰猛な狼は馥郁たる小山羊の柔肉を貪り喰らった。小山羊は鋭い牙に身体を震わせ、か細い声で哭いた。
だが、その実、いたいけな小山羊の方から、うっとりと我が身を差し出したのであった。
【あとがき】
(100227:四方山)
携帯で書いたものを、幾分か修正してアップ。
作中出てくる『七匹の小山羊』は、グリム童話の『狼と七匹の子山羊』から。
20年近く前ですが、好きで何回も読んでいただけに、ちゃんと内容を覚えていました。2年前に読んだ本の内容は、覚えていないのに……(2ヶ月前ですら怪しいかもしれない)
『狼と七匹の子山羊』の内容が知りたい方は、こちらからどうぞ→(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%BC%E3%81%A8%E4%B8%83%E5%8C%B9%E3%81%AE%E5%AD%90%E5%B1%B1%E7%BE%8A)
それにしても、関連項目にリンクが貼ってある山川純一の『死のロンド―狼と羊―』が変態すぎて噴いた。まさにゲイ術作品や!
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