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種ガンダム(主にアスカガ)のブログサイト
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※アスカガ大学生パロ(現代日本風・幼馴染)
『プレゼント ~ From Athrun To Cagalli ~』 (2)


 



「あー! いた! 探してたんだよ!! アンタ!!」
 ラウンジの一角を陣取る女性たちの前に、黒い髪をした青年――まだ少年といった雰囲気だが――が、現れた。
「シンかよ。公共の場所で大きな声を出すなよな」
 彼は、理学部の学生で、アスランとキラの二つ下の後輩に当たる。お互いに直情型のせいか、カガリとは衝突しがちだ。
 現に今も、カガリに対して噛み付きそうだったが、それを堪えて本題をまくし立てた。
「なあ、アンタ。今欲しいものはないか?」
「は?」
「もうすぐ誕生日なんだろう?」
「生憎、昨日終わったんだが……」
「終わったのか!? じゃあ、アスランさんからのプレゼント、何もらったんだ!?」
「な、なんだっていいだろ!?」
「いいから、教えろよ!!!」
 アスランのプレゼントに、どうしてここまでシンが興味津々なのだろうか。
 前からカガリは思っていたのだが、シンはアスランに近付きすぎなのではないだろうか。
 シンは、アスランのことを慕っており、普段ストイックで自分にも他人にも厳しいアスランが、幼馴染であるキラとカガリにだけ甘い顔をするのを、よく思っていない節があった。そして何故か、キラだって甘やかされているのに、彼女であるカガリにだけ、風当たりが強かった。
 本当は言いたくなかったけれど、シンの剣幕に押されるようにしてカガリは言った。
「……『醤油差し』」
 やっちまったのか、とシンは天を仰ぐようにして、自分が間に合わなかったことを知った。
「アンタ、アスランさんの前で、気軽に『欲しい』って言うのは、止めといた方がいいぜ。あの人真面目だから、なんでもその気にしてしまう」
「は? そんなこと言った覚えがないぞ」
「そうだろうよ。そんなこと、言った本人も、忘れてると思うよ。『醤油差し』を、本気で誕生日プレゼントに欲しいって言う人間はいないからな。でも、あの人真面目だから、いちいち覚えてるんだよ。特に、アンタが言ったことはさあ……」
 はて? ……そんなことを、アスランの前で、言ったことがあっただろうか?
(醤油差し……醤油差し…………)
 カガリは、記憶を掘り返すことに専念するが、全く覚えがない。そんなカガリに焦れて、シンが怒鳴った。
「醤油差しの具合が悪いから、とかなんとか言う話だよ!」
「ああ!!」
 カガリは突如思い出した。




 ――おろしたばかりの白い春物のブラウスに、茶色い染みがついているのに気がついたのは、アスランだった。

 それは、今年に入って、初めてジャケットを脱いだ日。
 今年の春は、ぐずぐずと寒い日が続いていたので、ゴールデン・ウィーク直前になって、やっと訪れた春めいた陽気に、カガリは浮かれていたのだ。
 爽やかな春風が、布越しに肌を撫でて行く感覚に、琥珀の瞳を細めながら、若葉が茂り始めた桜並木を歩いている時のことだった。
「カガリ、袖のところ汚れている」
「え……? あ! 本当だ!」
 右腕をねじって確かめると、茶色く、てんてんと二つの染みになっている。
 今朝、目玉焼きに醤油をかけた時に、跳ねてしまったのだろう。
「うちの醤油差しさあ、最初は出ないくせに、いきなりどばあっと出てくるんだよな」
 こちらが気をつけていれば、服に付かないようにできるものを、思いもよらないタイミングで出てくるものだから、想定できない軌跡で飛んできた飛沫を、避けられなかったことに気が付かなかったのだ。
「買い換えないのか?」
「だって、まだ使えるじゃないか」
 こちらが油断せずにヤツを使えば、問題はないのだ。
「醤油差しって、自分で買うイメージがないよな」
「そうか?」
「うん。今使ってるやつが、結婚式かなんかでもらったやつだからか、自分で買うって感じじゃない気がする。もらったら、新しいものと換えると思うけど、買いなおすものじゃないよ」
 カガリの家の食器類は、とにかく雑多な雰囲気である。結婚式の引き出物や、知人のお土産、母が気に入って系統立てずに買い集めたもの。それらが、一緒くたに食卓に出され、でもそれが自然と心地よい調和を生み出している。
「だから、お母さんも買い換えないんだと思うよ。百均ですら売ってるのにな」
「ふーん。そっか……」
 何かを思案するように、アスランが言った。
 結局そこでその話は終わり、今日の講義で提出するレポートの話へと移っていったのだが……


 思い出しながら、カガリはだんだんおかしくなってしまって、くすくす笑い出した。
「……これを、笑って受け止めてあげられるのは、あんたくらいよ」
「そう言いながら、フレイさんも笑っていらっしゃいますわ」
「あんたもね」ラクスの指摘を小うるさそうに、片目を瞑ってフレイが言った。
 カガリから伝染して、ミリアリアも、フレイも、ラクスも笑い出した。笑いの止まらない女たちをよそに、シンは呆れたように息を吐いたのだった。

 結局、アスランは、真面目すぎる程に真面目で、不器用なのだ。
 自分の恋人の誕生日に、醤油差しを贈る人間など、アスランしかいない。
 しかし、それでも、本人ですらも忘れかけていた些細なやりとりをいちいち覚えていてくれたアスランを、カガリはやはり愛おしいと思うのだった。






(1)へとモドル

【目次】














【あとがき】
アホな話をここまで読んで下さってありがとうございます。(ホンマええ人や……)
もうちょっと、面白い話になると思っていたのですが、これが私の限界でした・・・…(涙)


この話の元ネタは、父親の車に乗っている時に、ラジオで聞いた「昔もらった変なプレゼント」という話からです。
他は何があったのか忘れましたが、「前に付き合っていた彼氏から、『醤油差し』をもらった」というリスナーから寄せられたお便りが紹介されていました。
聞いた瞬間に、「なんで!?」と思い、真面目に色々な理由を考えてしまったのですが、醤油差しが壊れていたとか、彼女は料理が得意だから、とか……それが必要だったからあげたという、つまらん理由しか思いつきませんでした。(笑)
ちなみに、理由は、リスナーである彼女にも分からないのだそうです。
そもそも、一人暮らしだと醤油差し使わない人多いですよね。(私の周りではそうでした。)

なんか面白い理由を思いついたら教えてください。
何も出ませんが、上手い理由を思いつかれると、管理人が、ものっすごいくやしがると思いますwww


ちなみに、続編として、アスランの誕生日編もついでに書いておきました。
今年の10月29日は、私が忘れているか、サイトが閉鎖するかしない限り、これがアップされると思います。


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今更ながら、種ガンで二次創作。
いつかは、サイトになるはず……

だったけど、なりませんでした。
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