種ガンダム(主にアスカガ)のブログサイト
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※アスカガ大学生パロ(現代日本風・幼馴染)
※おまけ2のアスラン視点。つまり、蛇足。
※若干の大人描写あり。
『プレゼント ~ From Cagalli To Athrun ~』 おまけ3
楽しい時間は、いつでもすぐに終わってしまう。
「アスラン!」
ヒビキ家を後にしたアスランの背に、カガリの声が追いかけてきた。
「……カガリ?」
驚いて振り返ると、どこか心細げにカガリが立っている。
ちょうど、街灯が切れているところにいたため、カガリの方からはアスランが見えないのだろう。
アスランがヒビキ家の灯りの方へと歩き出すと、カガリはアスランの姿に気が付いて駆け寄ってきた。ブラウスの胸元に付いているリボンが、歩調に合わせてふわふわと揺れる。
「家まで送る!」
意気込んで一生懸命に言う彼女が可愛くて、つい笑ってしまう。
「ありがとう」
そう言うと、彼女は少し驚いた顔をしていた。きっと、断られると思っていたのだろう。
手を差し出すと、カガリも握り返してきた。
太っているわけではないのに、カガリの手は柔らかい。アスランの手に納まる小さな温もりが愛しくて、このまま家に連れて帰りたいと思う。もちろん、カガリの両親の手前、そんなことはできないのだけれど。
歩調を緩めて歩き出す。普段カガリが歩く速さよりもかなり緩めて歩いたのだが、彼女は何も言わなかった。
しかし、それでも、すぐに、自分の家に着いてしまった。
これで半分。もっと道が長ければ良いのにと思うが、この夜の散歩は、きっとあっという間に終わってしまうに違いない。アスランが、カガリと一緒にいたいと思っている限り、一緒にいられる時間は短いままだ。
カガリは、一人自宅に引き返そうとしているようだったが、当然のことながら、そのようなことはさせられないし、させない。カガリの家族も、アスランが夜道一人でカガリを歩かせないと想定して、カガリを送り出したのだろう。
だが、カガリは、アスランに迷惑を掛けていると思ったようだ。
「そんな大した手間じゃないよ」
アスランはそう言ったが、カガリは納得していないようだった。
――ああ、そうじゃない。
もう少し、カガリと一緒にいたかったから、二人っきりになれて嬉しい。そう言えば良かったのだ。
必要な言葉を必要な時に言えない。そんな自分が苛立たしかった。
アスランは、いつだってそうだった。相手のために、上手く言葉が使えない。それどころか、自分の気持ちですら上手く伝えられない。
「なんか、アスランには迷惑ばっかり掛けてる気がする」
もっとカガリを喜ばせたいと思うし、わがままをたくさん聞いてやりたい。
「迷惑掛けて良いのに」
そんな願いを込めて、アスランは言った。
「んー……」
だが、頑固なカガリは、納得してくれない。
「迷惑掛けて欲しいんだよ。カガリになら、一生迷惑掛けられても良い」
アスランは、カガリの人生に関わりたいと思っている。そして、アスランの人生にも関わって欲しいと思っている。人見知りの激しいアスランが、唯一それを許しているのがカガリだった。
「……ばかだな、アスランは。私だってそう思ってるよ」
アスランの内に、火が、灯る。
突然、アスランが手を強く引いたので、カガリの顔は驚いていた。
それを見て、男の愛情は、どうしても欲情に直結してしまうから、それを受け止める女は大変だと、他人事のように思った。
暗がりに入ると、壁に押し付けて、慣れた動作で唇を貪る。
抵抗しようと身を捩る動作に煽られて、手の動きがどんどん大胆になってしまう。覚えていたのは、カガリの胸元でふわふわと揺れるシフォンのリボンに手を掛けたところまでだった。その後はボタンを外して表れた、暗闇でも白く浮き上がる滑らかな肌に夢中になってしまった。
ふと現実に立ち戻らせたのは、アスランのニットの二の腕の辺りをぎゅっと握り締めた小さな手だった。
さすがに、ここではどうにもならないことに気が付きブラウスの下に潜り込んでいた手を引いた。暖かいカガリの身体から切り離されて、手がひんやりとした夜気に冷まされていく。
「あっ……」と名残惜しげな声が聞こえてきて、ふ、と忍び笑いを漏らすと、その微かな空気の音を悟られて、カガリに胸を叩かれた。
「ごめん」
悪いと思っていても、つい調子に乗ってしまう自分に、苦笑してしまう。
明るい所で、カガリの身なりを直してやろうと手を引いた。
ぼんやりとした灯りの下で見るカガリは、ひどい有様だった。乱れたブラウスと髪を直してやったが、カガリはアスランを誘うようにしっとりと瞳を濡らしている。思わず、柔らかい頬に手を伸ばすと、頬が焼けるように熱い。きっと、さらに明るい所で見れば、蜜を帯びた林檎のように熟れた頬をしているのだろう。
「……帰したくないな」
カガリの瞳を見て、そう思った。思うだけではなく、うっかり口にも出していたようで、カガリがうろたえている。
彼女をアスランでいっぱいにして困らせるのも楽しいけれど、早くカガリを家族の元に返した方が良いだろう。先程の戯れのせいで、アスランの家の間を往復するにしては、時間が経ち過ぎている。
カガリの父親にも約束した手前、いい加減なことはできない。カガリを育てた人には、やはりきちんと認めて欲しい。
「早く、家に入った方がいい……」
背中を押して促すと、カガリは躊躇うように何度もアスランの方を振り返った。
カガリが玄関の扉を閉めるまで見届けると、アスランは一人夜道を引き返した。二人で歩いた時よりも歩調を速めながら。
風を受けて、カガリの香りが、服から立ち昇ってくる。先程、カガリ本人から移ったものだ。
楽しい時間が終わった後は、寂しさをより強く感じてしまう。今夜は、きっとカガリの名残を何度も思い出すだろう。そして、カガリを想って中途半端に燻った身体を、持て余すのだろう。
すぐに会いにいける距離にカガリはいるが、近所だからこそ、この少しの距離が遠く思われてもどかしく思われた。
一生という途方もない時間を得るために、これぐらいのもどかしさは我慢すべきなのに。
そう覚悟していても、我慢できない自分の余裕のなさが、少しおかしかった。
カガリは、アスランに本当の孤独を教えてくれる存在なのだ。
【目次】
【あとがき】
余計な話だな~と思っていたのですが、やはりアップすることにしました。(うち、作品数少ないし)
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