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※アスカガ学パロ(高校生・幼馴染)
『つつゐづつ』 7-4




「何やっているんだ!」

 その光景を見た時、アスランはふつふつと血が沸くような怒りと、肺の奥が凍るような残虐な気持ちを覚えた。
 カガリをラスティから引き離すと、炯炯と光る翠の瞳で睨みつける。

 ――俺っ、カガリのことが好きなんだ! 前からずっと良い感じだと思ってて……。
 ――だから、その……、付き合って欲しいんだ!

 階段を下りてくるアスランにも聞こえる程の大声であった。
 こいつは、アスランの大事なカガリに気持ちを告げた。
 いや、気持ちを伝えるだけなら良い。アスランの大事なカガリを、怯えさせたのだ。
「……アスラン。俺、まだ、カガリに話があるんだ」
「何の話だ。お前の話というのは、カガリに強制することなのか?」
 アスランの硬質な声音は、聞くものに緊張を強いる程であった。はっきりとした敵意を向けられて、ラスティが僅かに怯む。 
(馬鹿だな、ラスティ。カガリは男が嫌いなんだよ)
 何も知らないラスティを侮蔑する。だが、それは皮肉にも、アスラン自身にも振りかかってくる侮蔑であった。
 彼も自分も、同じ穴の狢なのだ。二人とも、男である限り、彼女の敵であり、恋愛対象にはなり得ない。
 アスランの険悪な態度に怯んだラスティだったが、負けじと言返した。彼は、自分の言いたいことは、はっきりと主張する性分なのだ。
「お前が、カガリに対して何かを決める権利があんかよ? ただの幼馴染だろ?」
 かあ、と頬が熱くなった。
 ラスティは既に、知っているのだ。アスランが、ラスティに向けて姑息な牽制を仕掛けたことを。
 しかし、そこでたじろぐわけにもいかず、背中に感じる存在を想った。
 アスランは、ずうっとカガリだけを見つめてきた。今更、彼女をアスランの人生から切り離せるわけでもない。例え、結ばれなかったとしても、アスランはカガリを想い続け、彼女の幸せを祈るだろう。
「そうだよ。幼馴染なんだよ。だから、カガリは俺が守るんだ」
 はっと、小さく息を飲む音が背中から聞こえてきた。
 ラスティは、そんなアスランの言い分を嘲笑って言った。
「そんなのお前のエゴだろう? 守るとか言ってるけど、本当は幼馴染でいることに安住して、告れなかったんじゃねえの? 自分ができなかったから、俺が羨ましいだけじゃんか」
 図星だった。だからこそ、腹が立った。
「――っこの!」
 殴りかかろうとした時、胴に何かが絡み付いて、アスランの動きを封じた。
「っダメ! アスラン! ダメだ!!」
 カガリが、アスランの胴にしがみ付いている。
 アスランのブレザーを引っ張り、力の篭った小さな拳を見て、完全にとはいかないが、ラスティへの怒りが削げた。
「……カガリ。殴ったりしないよ」
 ほっと、カガリがあからさまに息を吐く。少し削げて丸まった心が、また尖っていく。
 
 カガリを守るのは、アスランの役割なのだ。それを奪われてしまったら――
 
 カガリがラスティに向き合って言った。
「……ごめん。その、ラスティのことは嫌いじゃないけど、付き合うとかは……」
「……あ、いや……」
 ラスティは、少し悲しそうな顔をした。
 だが、すぐに笑って言った。
「気にすんな。なんちゅーか、言ってみたかったというか、とり合えず言わないとって思って……。カガリを困らせたかったわけではないんだ。……こっちこそ、ごめんな」
 明日は、また普通にしててくれよ。そう言って、彼は帰って行った。
 普通にしていて欲しいというのは、アスランも含まれているのだろうか。それは分からなかったけれど、ラスティの着飾らない人柄が、羨ましかった。
「アスラン。私たちも帰ろう」
 カガリが、アスランの顔色を窺うように言う。
 何故だか、それが無性に腹立たしくて、ぶっきらぼうに答えてしまった。


****

 
 道すがら、カガリが言う。
「さっきラスティを殴ろうとしただろ? ああいう、危ないことは止めてほしい」
 答えようとしないアスランに焦れて、「アスラン、聞いてるのか?」と苛立った口調で言った。
「……約束できないな」
「アスラン!!」
「大丈夫だよ。別に、喧嘩ぐらいで死んだりしないし。カガリが危ない目にあったら、ちゃんと助けてあげることぐらいはできる」
 なぜなら、カガリを守るのはアスランの役割なのだから。
 「そんなの! そんなの、頼んでない! アスランのばか!!」
 通学鞄をフルスイングでぶつけられて、アスランは道端に倒れこんだ。
 起き上がった時には、カガリは既にその場を走り去っており、草薙ヶ丘の住宅街にアスランは独り立ち残された。

 カガリのために、 日照りも、大雨も、突風もない、ゆったりとした箱庭を作ってあげたのに。それをどうして、カガリは分かってくれないのだろう。
 彼女は時々、本当に無神経だと思う。






モドル≪  ≫ススム 










【あとがき】
『アスランは、カガリをかっこよく守れない』の巻。



 

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今更ながら、種ガンで二次創作。
いつかは、サイトになるはず……

だったけど、なりませんでした。
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