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※アスカガ学パロ(高校生・幼馴染)
『つつゐづつ』 4-2
慌てて、洗面所に連れて行き、なんとか事無きを得たが、カガリはどっぷりと落ち込んでしまった。
「……ぐず……ご、ごめん……ぐす……っく……あすらん。ごめん……」
「いや……大丈夫か?」
(俺がちゃんと止めていれば……)
それができなかったからこうなっているのだが、一度後悔するとそこから上手く抜け出せなくなるアスランにとって、後悔のループに嵌ることは必然であった。
泣くカガリを慰めながら、汚してしまったセーターの代わりに、自分のパーカーを着せてやる。
アスランに合わせる顔がないとでも言うように、カガリはふらりと立ち上がり、枕を抱き枕にして、アスランのベッドにもぐり込んだ。
アスランの位置から見ると、布団から僅かに金髪が覗いており、そこにカガリの頭があるのだということが分かる。鼻を啜る音や、嗚咽が漏れ聞こえてくる。
「ぐず……ぐず……な、情けない……レズのビデオ見れなかった……」
(俺としては、楽しまれなくて良かったけど……)
アスランが思うに、カガリは過去の強烈なトラウマのせいで、男性恐怖症なだけであって、レズビアンではないはずだ。ラクスへの感情は、同世代の綺麗な女の子に対する憧れのようなもので、友情の範囲を少しはみ出してしまっただけなのだろう。
尤も、そう思うのは、アスランがカガリに只ならぬ感情を抱いているからなのかもしれない。
小さな頃からアスランはカガリが好きだった。でも、それは一緒にいれば満たされてしまうような幼い感情で――
先程の男物のパーカーに着せられているような華奢な肢体が思い浮かぶ。
どうして、自分たちはここまで変わってしまったのだろう。
近頃アスランは、カガリの形良く膨らみ始めた胸や、きゅっとくびれた腰や、すらりと伸びた腕や脚を意識してしまうのだ。
(参ったな……)
こんなことを考えていると分かったら軽蔑されると思っていた。男が苦手なカガリの傍にいるために、女友達の延長線上にいようと思っていた。
小さな男の子と女の子が、ごっこ遊びをするための小さな箱庭。そこにいれば、二人はずっと安穏と過ごすことができたはずだったのに――。
(でももう、無理だ……)
アスランの中には、一つのグラスがある。それは、カガリを愛しく思う気持ちだとか、護ってあげたい気持ちだとか、それらとは背反するカガリへの衝動だとかが何滴も注がれて、今や表面張力で水面が盛り上がるほどにいっぱいになっている。
今でなくても、いつかは必ず溢れてしまっていただろう。
「カガリ……」
低く、甘い声で、その名を囁く。
布団を捲って、横向きに寝ているカガリを仰向けにする。
「あすらん……?」
泣いてぐちゃぐちゃになった顔は上等とは言えないが、きょとんと不思議そうな顔が可愛いとアスランは思った。
泣いて赤く腫れた目元に口づけた。
「気持ち悪い?」
「ううん……」
拒絶されずに済んで、アスランはほっとした。
「じゃあ、これは――?」
今度は、あかく熟れた唇に口付ける。
「気持ち悪くない……」
アスランは優しく微笑んで、カガリの隣に寝転ぶと、柔らかく温かい肢体を抱きしめた。
硬い身体と、柔らかい身体が、ぴったりと隙間なく合わさる。
カガリは、その時になって初めて、アスランの身体が思っていたよりも大きくて、逞しいことを知った。アスランは、女の子みたいに可愛くて、男だということは知っていたけれど、男だと意識したことが無かったのだ。
「なあ。今、キスしたのか?」
「うん」
初めてキスされて、びっくりしてカガリの涙は止まってしまった。
「アスラン……私さっきゲロ吐いたぞ……」
きちんと漱いだが、嘔吐した口が触れてしまった。
キスの衝撃がすとんと胸に落ちると、今度は無性にいたたまれなくなって、恥ずかしくなって、言わなければ良いことまで言ってしまう。
「いいよ」
事も無げにアスランが言う。
だって、ずっとキスしたかった。好きな女の子の唇は、例えようもなく甘くて、ふわふわと幸せな気持ちになる。
「それから……アスランの枕に鼻水付けちゃった……」
「…………。いいよ」
少し身体を離して、自分のシャツの袖で、カガリの涙と鼻水を拭ってやる。少し強くやり過ぎたせいか、カガリが拗ねたような顔になった。アスランは少し笑って、カガリの赤い鼻を摘んだ。もっと不機嫌な顔になったカガリに、ごめんと寝乱れた髪を梳く。
「カガリ……俺も男だけど、気持ち悪くない?」
「アスランが気持ち悪いなんてことない!」
全力で否定するカガリに、苦笑する。
「でも、それは……俺が女みたいな顔をしていて、カガリに悪いことをしないからだ」
「アスランは、私に悪いことなんてしない」
「――するよ」
今度は触れるだけではなく、貪るように口付け、服の裾から手を潜り込ませて、カガリの滑らかな肌を撫でる。
「ん……ちょっ! やだ!!」
何をするんだと、強引な唇から逃れると、身体を捩って、肌を撫で回す無骨な手を拒絶した。
「……ごめん」
アスランは寂しそうに微笑んで、するりとカガリの身体から手を離した。
傷ついた翠の瞳に、カガリの奥が痛んだ。アスランが何に傷ついているのかが上手く掴めなくて、その翠の瞳を探ろうとしたが、背中を向けられてしまった。
「もう遅いから帰った方がいい。送っていくから……」
「……うん」
そう言って従う他にないほど、アスランの態度は頑なだった。
モドル≪ ≫ススム