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※アスカガ学パロ(高校生・幼馴染)
『つつゐづつ』 5-1


 
 
 あれから数日――
 金曜日の三時間目は、保健体育の時間だった。男女別の授業になるため、カガリはクラスメイトと共に別教室へと移動する。
 その時、他の男子生徒とたむろっているアスランの姿が目に映った。お調子者のクラスメイトのように、はしゃいで大きな声を上げたりはしない。いつもと同じように、穏やかに笑いながら、友人の話を聞いている。
 そう。いつもと同じ通りの日々である。――だが、カガリとアスランは違った。
 今日も、カガリはアスランと一緒に登校した。表面上はいつも通りだが、二人の間には消すことの出来ない距離感があった。その距離感を産んだわだかまりを、意図的に日常の中に埋もれさせようとして、アスランもカガリも失敗している。
 今後もわだかまりは残って、日常に影を落とし続けるのだろうか。残るなら、それと正面から向き合うべきなのか、器用に避け続けていくのか。
 しかし、器用に避け続けるには、カガリは正直すぎたし、向き合うにしても、その方法が分からなかった。


*****


 一年女子の体育と保健体育は、ムウ・ラ・フラガという若い男性教諭が担当している。気さくな人柄から、生徒たちに人気者があったが、がっしりとした男らしい身体つきに、なかなか整った顔立ちであるから、女生徒には別の意味でも人気があった。
「いいかあ! 女も、恥ずかしがってばかりいないで、ちゃんと参加しろ! 二人でしているんだ。男任せにするんじゃないぞー!」
「もー! やあだ、センセー!」きゃあ、きゃあと、数人の女子生徒が甲高い声を上げる。
 最近の保健体育は、感染症を取り扱っている。今日は、性感染症の内容に触れているため、話がどうしてもその方向にいってしまう。特に、この男性教諭の場合、こういった話を好んでしているような向きがあった。だが、それをセクハラと取られないのは、彼の人柄がからりと明るく、話が面白いからだろう。
「『やあだ』じゃない! お前らの年頃の男なんて、『やる』ことしか考えていないんだ。だから、女の方が冷静に、流されないようにする必要がある。自分の身を守るためにも、正しく知識を身に付けて、嫌なことや駄目なことは自己主張しろ」
 フラガは真面目に言ったつもりだったのだが、十以上歳が離れている少女たちは、照れも混ざって茶化してばかりいる。あるいは、この男のくだけた雰囲気がそうさせているのかもしれない。
「それに、その気がないなら、男の方がかわいそうだから、あんまりキワドイ格好するんじゃないぞ!」
「え~。でも、別にそんなの個人のジユウじゃん」
 フラガは、生徒たちに分からぬように、一つ溜息を吐いた。
(あ~あ……。出たよ、出たよ。『個人の自由』ってヤツが)
 若年層が口にする『個人の自由』。まだ社会に出ていないからか、他人に迷惑を掛けなければ、法に触れなければ、何をしてもいいと思っている。むしろ、それが『個性』と呼ばれ、もてはやされてさえいるのだ。
 だが、本当は、例え誰かの迷惑にならなくても、誰かの目に余る言動をすれば、組織からは淘汰されるものだ。世間というものは、さほど『個性』とやらを必要とはしていない。
 こんなことを考えるようになったなんて、年を取った証拠なのかもしれない。かつてはフラガだって、『個人の自由』を主張して、大人の作った規則に反抗していたのだから。
「いやいや……。若いとな、コントロールできないんだよ。
 前に、喫茶店でコーヒーを飲んでいたら、隣のテーブルに座っていた坊主が前かがみになってたんだ。俺は、その時、坊主がどういう状態に陥っているか、ピーンときたね。坊主の彼女らしき譲ちゃんが、胸元見えそうなキャミソールに、生脚丸出しなショートパンツだったからな。どうも、坊主はその後、自分の部屋に連れ込もうとしたみたいだが、譲ちゃんは怒って帰っちまった。
 だから、自分の身を守るためにも、男の気持ちを踏みにじらないためにも……」
 そこまで言って、フラガは、窓際の列の前から三番目に座っている生徒が、話を聞いていないことに気がついた。
「こら! アスハ! お前は、俺の話を聞いていたか? 保健体育は、受験には役に立たんかもしれんが、生活の役には立つんだぞ!」
 突然当てられてしまった生徒は驚き、慌てて言い訳を始めた。
「聞いてる! 聞いてるって、先生!」
「そうかあ~? なんか、違うこと考えていただろう?」
 珍しいこともあるもんだな、と思う。彼女は、他の生徒とは違って、黙々とテストに出そうなところをメモしたり、教科書に線を引いたりして、いつも真面目に授業を受けているのに。バジルールの話では活発な生徒らしいが、フラガの授業では大人しい生徒だ。どちらかというと、よそよそしいという表現の方が正しい。
「いや、聞いてたよ。若い男の人は、その……そういう衝動が抑えられないから、けしかけちゃ駄目だってことだろ?」
「お! なんだ、聞いてるじゃないか」
「……うん」
「なんだ、元気がないな……。なにか、悩み事か? 相談ぐらい乗ってやるぞ」
「……いや、いいです」
 せっかく心を開いてくれそうだったのに、また閉じていく彼女の様子を見て、フラガは残念に思う。
 だが、こういう生徒にとっては、むしろ干渉される方がストレスになるのだ。
「ま、言いたくなったら、言えよ」
「はい」
 その素直な返事に、少し口元が緩む。悩み事があることを隠さないだけ、彼女の心は頑なではないのだろう。
 フラガは、時計の針を見て、授業のまとめに入った。
「お前らの年で、性に興味を持つなというのも難しいだろう。だが、できればまだ待った方がいい。しないことが、最良の避妊方法であるし、性感染症の予防方法でもある。
 そして、両者合意の末に、どうしてもしたいというのであれば、避妊具は絶対付けてもらえ。それが恥ずかしくて言えないというなら、まだするべきじゃない」
 真面目な雰囲気になったので、生徒達の顔も少し真剣になる。フラガはそれに満足して、最後に茶化して締めることにする。
「それから、これは男の立場から言わせてもらうと、男が助平なのは仕方がないから許してやれ。本当は、高校生がアダルトビデオやエロ本を見るのはいけないことだが、無責任な行動に出るよりは、そっちで発散した方がいいと思う。
 だから、彼氏の部屋でエロ本見つけたからと言って、勝手に破いたりしちゃ駄目だぞ」
 生徒たちから、笑いが漏れ始める。
「えー! センセー、破かれちゃったのー? ジゴージトクだよ」と、生意気そうな声がする。
「うるせー!」
 苦笑しながら、フラガは憎まれ口を返した。やっぱり、真面目なのは自分の性に合わないから、これぐらいがいいなと思って、窓際三番目の席を見遣ると、彼女は何故か先程よりも微妙な顔をしていた。





モドル≪  ≫ススム 

 











【あとがき】
ムウが、真面目に大人をやっている……(笑)
この保健体育の先生は、私の高校の時の先生がモデルです。
ムウのように若くはありませんでしたし、進学校だったせいかこんなフランクな雰囲気にはなりませんでしたが、話が面白くて私は好きでした。


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今更ながら、種ガンで二次創作。
いつかは、サイトになるはず……

だったけど、なりませんでした。
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