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種ガンダム(主にアスカガ)のブログサイト
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※アスカガ学パロ(高校生・幼馴染)
『つつゐづつ』 2




(あー! 遅くなっちゃった! アスラン、待ちくたびれてるだろうなあ……)
 廊下は走ってはいけないが、もう放課後で、小うるさく注意する先生方もお帰りになった頃だ。カガリは、アスランの待つ1-Aの教室まで、リノリウムの床を鳴らしながら、全力疾走した。昇降口から一番遠いところにある教室だが、スポーツで鍛えられた健脚は、リズミカルに動く。
 カガリは中学からずっとソフト・ボールを続けている。
 今日も、顧問のナタル・バジルール先生のノックは厳しかった。全員がエラーを出さずに終えることができないと、またサードからノックが始めるのだ。おかげで、アスランを随分待たせることになってしまった。
「アスラーン!! 待たせてごめん! 帰ろう!」
 教室に飛び込むと、本を読んで待っていたアスランが顔をあげた。
「あ……」
 名残惜しそうに本を見るアスランに、そんなに急かしてないのに、とくすりと笑ってしまう。
「いいよ、切りのいいところまで読めよ」
「うん。あと少しで終わるから」
 アスランはそう言って、また本の世界に戻り始めた。
 赤い西日が教室に差し込み、文字を追うために伏せた長い睫毛が、白皙の頬に影を作っている。
 カガリは、この幼馴染が静謐な美しさを滲ませる瞬間が好きだ。
「アスランは女の子より綺麗だなあ」
 うっとりとアスランを見つめて、カガリは見たまま、思ったままのことを口にした。カガリにとって、美しいものは美しいと褒め称えるのは至極当然のことであった。
 アスランは、何ともいえない微妙な顔をして本を閉じた。
開いていたページにまだ文字が残っているのに、読書を終えてしまったアスランに、カガリは首を傾げる。
「もういいのか?」
「ああ……」
 本人がいいと言うのならば、いいのだろう。カガリは納得して、首に掛けられていたタオルを鞄の中にしまった。
 そんなカガリをちらりと目の端で見遣って、アスランは密かに溜息を吐く。
 アスランの内心は複雑だ。男としては、女より綺麗だなんて言われたくない。ましてやそれが、意識している相手なら尚更である。
 母には悪いが、母親似の女顔がずっとコンプレックスだった。小さい頃から散々女に間違われ、成長期になったら変わるはずだと思っていたのに、顔立ちの優美さは損なわれないまま高校生になってしまった。さすがに女に間違われることはなくなったが、今度は女装をさせたら似合うだろうとからかわれるようになった。
 だが、この顔でなかったら、男性恐怖症のカガリとはずっと一緒にいられなかったかもしれない。
「待たせてごめんな。部活が長引いちゃって。遅くなる時は、待ってなくてもいいのに」
「いや。読みたい本が読み進められるし、家で勉強するよりずっと捗るから」
 あの日、カガリを置いていってしまった反省から、アスランはカガリとできるだけ一緒に帰るようにしていた。
 アスランの時計は、カガリを中心として回っている。



 二人は小さな箱庭の中にいた。日照りも、大雨も、突風もない、ゆったりとした箱庭の中である。箱庭の中には、子供の背丈よりも大きい筒井筒があって、二人はそれを見上げながら遊んでいる。
 アスランだけが、この異常に気が付いていた。なぜなら、それは彼が意図して作り上げた箱庭だからだ。
 しかし、それで良いと思っていた。彼にとっては、カガリが平穏に暮らせれば、それで良かったのだ。

 もう、とっくの昔に、二人の背丈は筒井筒よりも高くなってしまったというのに――
 






モドル≪  ≫ススム 



 

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今更ながら、種ガンで二次創作。
いつかは、サイトになるはず……

だったけど、なりませんでした。
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