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※アスカガ学パロ(高校生・幼馴染)
『つつゐづつ』 1-1
草薙ヶ丘ニュータウンは、鎮守の森に囲まれた緑豊かな新興住宅地だった。森の中には、発掘バブルの頃に調査された古代の遺跡があり、今は整備されて地域住民の憩いの場ともなっている。いわば、社会教育を売りにした建売住宅である。駅からはバスに乗らなくてはいけない距離で、少々不便ではあるが、その分割安になっている。当然、子供の情操教育とマイホーム獲得に目が無い、小さな子持ちの夫婦が多く移り住むようになった。
アスランとカガリは、ここで共に育った幼馴染だ。
二人が出遭ったのは、まだ物心つかぬ赤ん坊の頃で、最初は互いの親が仲良くするようになった。そうこうしているうちに、二人は同じ年の気安さでよく遊ぶようになった。他にも幼馴染はいたが、アスランにとってはカガリが、カガリにとってはアスランが一番の友達だった。二人は何から何まで正反対で、それが互いの足りない所を補うようで馬が合ったのかもしれない。
今日も、二人は、鎮守の森がある御社の境内で遊んでいた。最近、ニュータウンの子供たちの間で流行っている『至上最強戦隊・フリーダム』ごっこである。
「やあ! わたしは、ふりーだむ・ぴんく! あくのちぇあーまん、かんねんしろ!」
「カガリ、パンツみえているよ」
フリーダム・ピンクの必殺技、ルージュ・キックをアスランに向かって繰り出したカガリに、アスランは少し恥ずかしそうにしながら、スカートの中身が見えていることを指摘した。
このように、考えるよりも身体を動かすのが好きなカガリを、思慮深いアスランがフォローするのが二人のいつもの関係である。逆に、引っ込み思案で自分の殻に閉じこもりがちなアスランを、カガリが持ち前の積極性で引っ張り出してくれることもあった。
「こら! アスランは、ちぇあーまんだろ? きっくされたら、たおれなきゃだめだ!」フリーダム・ピンクに為りきっていたカガリは、アスランの反応に不服そうに頬を膨らませた。
「やだよ! おれは、なぞのナイト・ジャスティスだ!」
謎のナイト・ジャスティスとは、フリーダム・ファイブが危機に陥った時に助けてくれる、文字通り謎の騎士である。実は、その正体は、敵のチェアーマン、一の配下イージス。だが、チェアーマンの思想と自らの正義が食い違い、イージスは苦悩の末にナイト・ジャスティスに変装し、フリーダム・ファイブを影ながら助太刀しているのだ。
戦隊モノは子供だけのジャンルではない現在、イージスとピンクの禁断の恋は、お母様方のハートをがっちりキャッチしている。
そんなことは露ほども知らぬカガリだったが、カガリよりも若干ませているアスランは、ピンク、すなわちカガリを守るのは俺だと自負しているのだ。いつも、近所の友達たちと『史上最強戦隊・フリーダム』ごっこをやる時、カガリがピンクをやるなら、アスランはナイト・ジャスティスの役を絶対譲らない。
しかし。
「じゃあ、あくやくが、だれもいないじゃないか?」
「……わかったよ」
今日は二人しかいないのだから、片方が正義の味方なら、残された方が悪の元締めをやるしかない。そして、どちらがやりたい役をできるのかというと、二人の性格の違いから、それは明らかであった。
だが、譲ることはできても、まだ子供のアスランには、嫌な役を全うすることはできなかった。
「ちぇあーまん! かくごしろ! とあーー!!」
「ぐ、ぐわーー。やられたーー」
カガリのルージュ・キックに合わせて、棒読みのアスランの台詞が続く。
そんなやる気のないアスランに、カガリがむくれて怒った。
「こら! もっとまじめにやれ! 『やられたーー』じゃなくて、『や~ら~れ~た~!』だ!」
「しかたないだろ! おれだっていっしょうけんめいやってるもん!」
大人でも、やりたくない役割をするのは、気が進まないものだ。まして、子供ならば、その気持ちが顔に出ても仕方がない。
しかし、もう片方も子供である場合、嫌な役割を押し付けられた相手の気持ちを汲んでやるのは難しい。
「あーあ! トールなら、もっとうまいのに……」
「なんだよ、それ! じゃあ、トールとあそべばよかったじゃないか!」
好きな女の子に、他の男と比べられて腹が立つのは、大人も子供も同じである。
その後は売り言葉に、買い言葉。二人は、喧嘩別れをしてしまった。
≫ススム
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