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※アスカガ夫婦パロ
『一日の終わりは、手をつないで――』 4
もう、陽が地平に沈みそうになっている。ぎらぎらと白く照り付けていた太陽は、赤く燃えながら丸い輪郭を明瞭にしていた。
アスランは、市内を東西に横断する河川敷を訪れた。
鉄橋から眺めると、川面に赤い光があたり、きらきらと反射している。
果たして、カガリはそこにいた。
川面を眺める横顔が、ひどく物憂げで、声を掛けるのが躊躇われるほどだった。その一方で、カガリを確かめたくて、アスランは震える声で恐る恐る名前を呼んだ。
「……カガリ」
カガリの金髪も、赤い光に染められ、アスランの目には眩かった。彼女は、ゆっくりとアスランの方を向いた。
「……捜しに来てくれたのか?」
「捜すよ。カガリがいなくなったら、……困るから」
一瞬、瞳が絡んだが、すぐに逸らされ、カガリはまた川面を眺めた。
その瞳が潤んでいたのは、光が眩しいという理由だけではあるまい。
すぐに、二人の間に沈黙が落ちた。カガリは頑なに、アスランに横顔だけを見せ続ける。アスランは、このまま沈黙が続くことが恐ろしくなって口を開いた。
「ここにいたんだな……」ある一つの感慨を込めて、そう言った。
「……うん。ここに、来たくなってしまって」
胸がひどく痛んだ。ここは、アスランがカガリに「一生を掛けて、カガリを守る」と誓った場所であった。
弟夫妻や友人に遠慮して辿りついたのが、二人が家族になろうと決めた場所だったなんて――。
カガリが哀れだと思った。
そして同時に、カガリにそうさせてしまった自分の不甲斐なさを、心の底から憎んだ。
だが、自分に都合の良い考えかもしれないが、手酷く傷つけてしまっても、始まりの場所を選んでくれたのであれば、まだ取り戻せるような気がした。
自分のものより、一回り小さな手を握る。握り返されることもなかったが、拒否されることもなかった。アスランは、ほっと息を吐く。
今まで、妻の手を握ることが、こんなに怖いことだとは思ったことがなかった。
「帰ろう……」
返事は無かったが、手を引くとカガリはアスランの後ろを歩き出した。カガリが今、どんな気持ちでいるかは分からない。それを確かめるために訊ねることはおろか、振り向いて顔色を伺うことも、怖くてできなかった。
ただ、彼女が傍にいてくれるだけで、涙が出そうなほど幸せだと思った。
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