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※※注意※※
この回には、暴行シーンがあります。さらっと書いたので、大したことはないと思いますが、苦手な方はご遠慮下さいませ。(大丈夫な方は、続きからご覧下さい。)
「酔っ払いアスランが、仕事の憂さを晴らすように、カガリに酷いことをした」ということだけ頭に入れていただければ、先の展開には差し障りがないと思います。
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※アスカガ夫婦パロ
『一日の終わりは、手をつないで――』 3-2
昨夜のアスランは、酷く荒れていた。
寝食を忘れて取り組んでいた研究が、昨日突然、予算の関係で中止を言い渡されてしまったのだ。折からの不況である。仕方がないことだとは言え、今までの努力が無に帰すことは、納得ができるものではない。
しかも、上司は、アスランが率いる班が、実験の進め方が遅いと責めた。確かに遅れていた。遅れていたのは、アスランの後輩に割り当ていた部分であった。PHASE31~45を割り当てたのだが、作業のやり方を一向に覚えてくれないために、遅れが出た。教えてくれなかったからだ、などと言い訳をしていたが、大学院を出ていれば、アスランたちのやり方を見て、すぐに身に付けることができたはずだ。
それに元々、実験計画に、無理があったのである。疲れれば、人間誰だって作業効率が落ちる。それでも、ぎりぎりの集中力を保って、みんな良くやった方だと思う。
力なく、班を組んでいる仲間に、研究の中止を告げると、みんなの顔に浮かんでいた疲労は、さらに濃くなったようだった。おそらく、アスランも酷い顔をしていただろう。
帰り際、アスランの班の実験中止を聞きつけた同僚が、声を掛けて来た。
「気にすんなよ」
きっと、彼は軽い気持ちで言ったのだと思う。だが、アスランは、彼が要領良く、手間の掛かる実験を、他人に押し付けていることを知っている。何しろ、中止になった実験こそが、本来は彼の仕事であったのだ。精鋭が多く揃っているアスランたちの班で駄目だったのだから、サボり癖が付いている彼の班がやっても駄目だったのかもしれない。しかし、拭えない鬱屈を、塗りつけられたような気がした。
そんな憂さを晴らすために、安い酒を飲んだのが、いけなかったのだろう。
調子の良い同僚に、反省の色が見られない後輩。権限は与えてくれないくせに、責任だけは押し付けてくる上司。ぐるぐると、彼らへの屈折した感情が目まぐるしく湧き上がり、鬱屈は晴れるどころか酷くなるばかりであった。
酔いでふらつきながらも、なんとかタクシーで帰宅すると、妻のカガリが起きてきてアスランを出迎えた。夫の帰りを待つために、まだベッドには入っていなかったのだろう。シーツには皺が寄っていなかった。
ぼんやりとしたオレンジの灯りに照らされて、薄い布地に包まれたカガリの肢体が浮かび上がる。
ひどく喉が渇いていた。飲み込んだ唾液は、喉を潤そうとしたものか、それとも――
気が付いた時には、カガリをベッドの上に押し倒していた。
何もかもを、カガリの中に吐き出したかった。酩酊した息が、カガリの顔に掛かった時、カガリは酒臭さに顔を顰めた。それが、妻にまで邪険な扱いを受けたようで、アスランの癇に障った。
押さえつける力は、ますます強くなった。
今日は、そんな気になれないから、やめて欲しい。そう懇願する女を、男の力で組み敷き、手荒な抱き方をした。
――あれは、暴力であったと思う。
好き合って結婚した男女と雖も、片方の同意を得ずに関係を強いれば、それは立派な暴力になるのだ。
自分がカガリにしたことを、アスランは自分でも許せなかった。
どうして、一番大事な人に、あんな酷いことができたのだろう。
甘えていたのかもしれない。カガリにだけは分かってもらえる。カガリにだけは許してもらえる。感情を吐露することが苦手なアスランは、いつだって、彼女に助けられていたから。
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