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※アスカガ・オリキャラ視点・戦後IF
『サマータイム』
エピローグ
これが、僕が誘拐された事件の顛末である。
僕は、このことを――僕が泣いてしまったことと、父と金色の女性がキスしていたことを除いて――信頼のおける幾人かに打ち明けてみたが、誰もが作り話だと思って相手にしなかった。作家志望の幼馴染などには、お前は作家には向いていないと鼻で笑われる始末であった。
我ながら荒唐無稽な話だとは思うが、大人になった今でもしこりとなって忘れられない。機内でもこうして、暇に飽かして思い出していたのだった。
前方から、軽いどよめきが聞こえてきた。
東の空が明るい。空も海も赤く燃えるようになったかと思うと、水平線から煌く太陽が姿を現し始めた。
空港のデッキから見える朝日に、搭乗手続きを終えた客が皆、釘付けになって眺めている。
あの日も、父と共にこの朝日を見た。
今は一人で見ている。
僕は今、長時間の退屈なフライトを終え、オーブ連合首長国に来ていた。
オーブの語源には色々と説があるそうだが、太陽、それも曙光を指すという説がある。――そう、朝日のことだ。
僕の名前は、アサヒという。オーブの公用語である日本語を勉強している時に、かの国の国名と、僕の一風変わった名前が同じであることに気が付いた。父に聞いてみると、名前を考えている時に丁度その日本語を知り、名付けたのだそうだ。
どうやら、この国とは何かと縁があるらしい。
僕は、宇宙工学の勉強をするために、この奇縁あるオーブにやって来た。たった一人の家族を、故郷のスカンジナビアに残して。
――あれから、既に十数年の時が経ったが、未だに父は、男やもめで女気も無く、僕の父親をやっている。
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ここまでお読みいただいて、ありがとうございました。