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種ガンダム(主にアスカガ)のブログサイト
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※アスカガ夫婦パロ
『一日の終わりは、手をつないで――』 2



 まず、アスランが向かったのは、カガリの実家であった。
 実家といっても、同じ市内にあり、車を十分ほど走らせたところにある。今現在、この家に住んでいるのは、カガリの双子の弟キラと、その妻のラクスだけである。カガリとキラは若くして両親を亡くしているため、この家はカガリの実家というよりも、弟夫妻の家というべきかもしれない。

 玄関を開けたのは、身重のラクスではなく、キラだった。彼は、汗みずくになって突然現れたアスランに驚き、円らな瞳を、さらに丸くしている。
「と、突然どうしたの……?」
「カガリ! カガリ来なかったか!?」気が急いているアスランは、自分の聞きたいことだけを叫んだ。
 そんなアスランのただならぬ様子に、キラは訝しげに顔を顰めた。
「いや……。来てないけど……」
 一番心当たりのある場所に、一番初めに来たというのに……。当てが外れ、大きな失望と焦りがアスランを襲う。
「ねえ、そんなに慌ててどうしたの?」キラは心配そうに訊ねた。
 すると、小さく扉の開く音がした。
 玄関先での騒ぎが聞こえたのだろう。廊下の奥から、大きな腹を抱えたラクスが顔を覗かせた。
 今が、一番大事な時だ。二人に心配を掛けるわけにはいかないと思い、アスランは適当な嘘を吐いた。
「いや、大したことではないんだ。朝から喧嘩をしてしまって……。カガリが家を飛び出して行ったんだが、昼になっても戻って来ないから、心配になって捜しに来たんだ」
 それを聞いたキラが、後ろにいるラクスに振り返り、休んでいるように気遣うと、それで彼女も納得したようで、扉の奥へと姿を消した。
「もー……。なんだよ。夫婦喧嘩か……」
 にやにやと、からかうような笑みを浮かべて、キラが言う。彼は、アスランとカガリが付き合いだす前から、二人の痴話喧嘩に付き合わされてきたのだ。こういう時に、気を揉んだところで、それが骨折り損になることは、既に学習済みである。
「それにしても、君も成長しないよね。カガリの機嫌を損ねて参ってしまうのは君なのに、また怒らせちゃったの?」
「……うるさいな」精一杯の演技で、苦笑を浮かべながら言った。まるで、ただの夫婦喧嘩に参っている、情けない亭主に見えるように。
 それを受けて、キラは冗談めかして言った。
「カガリの家族は、今は君なんだから……。そんなのだったら、カガリは返してもらうよ。うちは、カガリ一人ぐらい住まわせることができるんだから」
 勘弁してくれ、というアスランの情けない声に合わせて、キラが笑う。
 胸が痛い。今、アスランは、自分が笑えっているだろうかと不安になった。キラは、冗談でそう言っただけだ。――カガリの家族は、アスランだけなのだ、と。
 カガリが安心して暮らせる場所を、夫であるはずの自分が奪ってしまった。そんな愚かな人間が、まだ家族と名乗ることができるだろうか。
「ねえ。そう言えば、ここまで走って来たの? 車は?」
 車を使うことなんて、全く考えも付かなかった。唖然とするアスランに、キラが呆れて言った。
「電話して聞くって方法もあったのに……」
 ズボンのポケットには財布しか入っていない。携帯電話は、昨日着ていたスーツの上着にでも入れたままだろう。気がひどく動転していたために、少し考えれば気が付くことも気が付かなかったらしい。
「……俺、カガリの携帯にも電話してない」
「よっぽど、焦ってたんだね……」キラは呆れ果てたというように、苦笑した。
 そうか、電話か……と思う。まずはカガリに掛けて、それから市内に住んでいるカガリの友人を尋ねよう。
 まだ、希望が残されているような気がして、アスランの心は急いた。
「すまないな。休日に押しかけて」短く礼を言い、一旦家に帰ることを告げる。
「うん。頑張って捜すんだよ。見つかったら、メールでいいから連絡して」
 一つ頷いて了承を示すと、キラの家から大通りへと向かった。
 
 ――キラの言う通り、カガリを、カガリのいる日常を、取り戻せることができれば良いのだけれど……。
 そんな不安を直隠しにしながら、アスランは、大通りでタクシーを拾って自分の家へと急いだ。





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今更ながら、種ガンで二次創作。
いつかは、サイトになるはず……

だったけど、なりませんでした。
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