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■ キーワード6 『無』
(種デス後)





「怖いな……」とカガリが呟いたので、アスランは指通りの良い金の髪を梳いていた手を思わず止めた。
「何が?」
「――っ…………」
 何か言おうと形作られた唇をすぐに噤んで、カガリはアスランの肩にぎゅっと額を押し付けた。
「お前がいれば、何もいらなくなりそうで怖い……」
 掠れて、よく耳を澄まさないと聞こえないほどに小さな声。
 こんなことは、とてもアスランの顔を見て言えないのだ。恥ずかしくて。そして、アスランに我慢を強いている今の状況では。
 思ってもみなかったことを言われたアスランは驚いた。その台詞は、彼女に恋焦がれる一人の男としての部分を満足させたが、アスランが欲しいと思っていた本当の形を成していなかった。アスランは、カガリの強さも弱さも、その何もかもを愛しているから――。
 講和条約締結に向けて、各国が我慢を重ねて、妥協のラインを探りあう現状に、カガリは疲れているのだろう。特にオーブは戦勝国として、未だかつてないほどに世界のリーダーとしての立場を求められている。ようやっと二十に届きそうな少女に託された、重すぎるほどの使命。疲れないはずがないのだ。
 色んな人間がいるから、全ての人間を満足させることは不可能だと知りつつも、それでももう二度と馬鹿げた戦争を起さないためにも、細心の注意を払わなければならない。
 ぽんぽん、と労わるように薄い背中を叩いてやる。
「大丈夫。君は、自分の欲しいものをごまかしたりなんかしない人だ」




 **********




没バージョン

「怖いな……」とカガリが呟いたので、アスランは指通りの良い金の髪を梳いていた手を思わず止めた。
「何が?」
「――っ…………」
 何か言おうと形作られた唇をすぐに噤んで、カガリはアスランの肩にぎゅっと額を押し付けた。
「お前がいれば、何もいらなくなりそうで怖い……」
 掠れて、よく耳を澄まさないと聞こえないほどに小さな声。
 こんなことは、とてもアスランの顔を見て言えないのだ。恥ずかしくて。そして、アスランに我慢を強いている今の状況では。
 思ってもみなかったことを言われたアスランは驚いた。
 その台詞は、彼女に恋焦がれる一人の男としての部分を満足させたが、アスランが欲しいと思っていた本当の形を成していなかった。
 講和条約締結に向けて、各国が我慢を重ねて、妥協のラインを探りあう現状に、カガリは疲れているのだろう。特にオーブは戦勝国として、未だかつてないほどにイニシアチブを求められている。ようやっと二十に届きそうな少女に託された、重すぎるほどの使命。疲れないはずがないのだ。
 色んな人間がいるから、全ての人間を満足させることは不可能だと分かりつつも、それでももう二度と馬鹿げた戦争を起さないためにも、細心の注意を払わなければならない。
「じゃあ、一緒に、誰も俺たちを知らない場所に行く? そこで、のんびりと隠遁生活でもおくろうか?」
 今度は、カガリが驚く番だった。
「どこがいいかな? 君は有名人だから、無人島ぐらいでしかのんびりできないだろうだけど」
「ちょっ、お前……!!」
「カガリが望むのなら、どこへでもさらって行ってあげるよ」
 綺麗な笑みを作って、アスランはとんでもないことを、事も無げに言ってみせた。
自浄できないほどの鬱屈とした澱が、きれいに流れていくのが分かる。カガリの頭のどこかが「馬鹿なことを言ってしまったもんだな」と冷静に自身を指摘した。
 男の確信犯な微笑みを、カガリは睨め付けた。
 ――分かっているくせに……。
 悔しいぐらいに、この男はカガリの扱い方を心得ている。
 それが、ひどく悔しくて、でもなぜか嬉しくて、カガリは痛いぐらいにぐりぐりと額をアスランの身体に擦り付けて、「バカヤロウ……」と呟いた。
 ぽんぽん、と労わるように大きな手が、カガリの薄い背中を叩いてくれる。
「君は、自分の欲しいものをごまかしたりなんかしないよ」






『口説きバトン』目次











【あとがき】
アスランが惚れたカガリは、好きな男一人だけで、満足できるような女ではないのだ!!
カガリの凄いところは、綺麗事を本気で信じていて、それを実現したいと思っているところにあると思うのです。大人になると、みんな自分を納得させるのが上手くなるものですが、彼女は自分を誤魔化さない強さを持っていて、そんなカガリをアスランは好きでたまらないのではないのでしょうか?(という、管理人の妄想です。)
しかし、没バージョンのアスランは偽者だ!!こんな女扱いが上手かったら、今頃は……



 

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今更ながら、種ガンで二次創作。
いつかは、サイトになるはず……

だったけど、なりませんでした。
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