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※アスカガ大学生パロ(現代日本風・幼馴染)
※若干の大人描写あり
『プレゼント ~ From Cagalli To Athrun ~』 おまけ2
楽しい時間は、いつでもすぐに終わってしまう。
「もう、そろそろお暇します。ご馳走様でした」
後ろからアスランの声が聞こえてきて、カガリはキラと対戦していたゲームの電源を思わず切ってしまった。「あ``ぁ!」とキラが素っ頓狂な声を上げる。
「ごめん。私が長い間やってたから、つまんなかった? 代わるよ。次、アスランだろ?」
二人しか対戦できないので、順番に交代していたのだ。カガリがコントローラーを差し出すと、アスランは苦笑しながら首を横に振った。
「もう、九時だから帰るよ」
「え、もう?」
カガリは、言われて初めて、時計の針が直角を描いていることに気がついた。アスランが来た時は、針は縦に真っ直ぐ一直線を描いていたのに。
アスランは、カガリの両親に再度礼を言うと、キラとカガリに「じゃあな」と言って、リビングを後にした。
キラは素っ気無く「うん、じゃあね」と言ったのだが、カガリは喉の奥に何かが詰まってしまったようで、挨拶もできなかった。
家族総出でアスランを玄関まで見送る。
しかし、玄関が閉まってアスランの姿が見えなくなると、カガリは何かに背を押されたようにして後を追いかけたのだった。
「カガリ!?」家族の心配そうな声が聞こえる。
「アスランを見送ってくる! すぐそこだから、すぐ帰る!」
そう言うと、「危ないから、すぐ帰るんだよ!」という声が背中の方から聞こえてきた。
おざなりに返事をして、カガリはアスランを追いかけた。
「アスラン!」
すぐに呼びかけたのだが、アスランの姿が見えない。もう帰ってしまったのかと、一瞬気落ちする。
しかし、「カガリ?」というよく通るテノールが聞こえてきて、暗闇からアスランが姿を現した。
ちょうどそこだけ街灯が切れていて、アスランの姿が見えなくなっていたようだ。
カガリの家の前まで引き返してくれたおかげで、アスランの顔がよく見える。
「どうした?」と、彼は優しい顔でカガリの顔を覗き込んできた。
「家まで送る!」
危ないからいいと言われても、カガリはアスランを家まで送り届けるつもりだった。
だが、予想に反して、アスランは「ありがとう」と言って、手を差し出した。
さらさらに乾いていて、少し冷たい手を、握る。
十月末の夜の外気に身が震えたが、不思議とその冷たい手は不快ではなかった。
「カガリ。お茶碗ありがとう」
「ん。でも、ウチに置いておくから、ちゃんと使いにくるんだぞ」
「うん」
暗いから分からないが、彼は今、多分、少し困ったような顔をしているだろう。
アスランは、誰かに迷惑を掛けることを極端に嫌うから。
本当は、あんなプレゼントで良かったのか自信がなかった。金額的に見ても、大したものではない。だが、今日の様子を見て、あれで良かったのではないかと思った。
大勢がいるところで、自分だけが余所者扱いされれば、カガリなら傷つく。独りでいるよりも、もっと孤独を感じるだろう。
もっと、誰かに寄りかかって良いんだよと言いたかった。カガリも、カガリの家族も、アスランならば、いつだって受け入れる準備はできている。
あっという間に、アスランの家に着いてしまった。
冷たい温もりを手放すのが惜しかったが、近所なのでしかたがない。手を離そうとすると、アスランはカガリの手を引っ張って、今度はカガリの家に向かって歩き出した。
「アスラン?」不思議に思って呼びかける。
「家まで送る。近くだけど、さっき街灯切れてて暗いところがあったから危ないし」
あ、と思う。
結局、カガリのわがままが、アスランに迷惑を掛けている。
「ゴメン。迷惑掛けて」
近くだから大丈夫だと言いたかったが、きっとアスランは譲らないだろう。
「そんな大した手間じゃないよ」
アスランはそう言ってくれたが、カガリは、自分のことばかり考えている自分に気が付かされ、少し自己嫌悪に陥った。
「なんか、アスランには迷惑ばっかり掛けてる気がする」
「迷惑掛けて良いのに」
「んー……」
そうは言われても、納得できるものではない。過去のプレゼントのこともあり、カガリがアスランを上手に気遣えた試しがないように思われた。
「迷惑掛けて欲しいんだよ。カガリになら、一生迷惑掛けられても良い」
「……ばかだな、アスランは。私だってそう思ってるよ」
アスランを、もっと上手く甘やかしてあげたいのに、できないのが悔しい。
先程の、街灯が切れているところまで来た。近いから、もう終わってしまう。いや、アスランと一緒にいたいから、早く終わってしまうように感じてしまう。
別れを惜しみ、元々遅かった歩調をさらに緩めて足を踏み出す。
だが、暗闇に包まれた瞬間、カガリはアスランに手を強く引かれた。
訳も分からぬままアスランに誘導され、背に固いコンクリートの塀の感触を感じたと思うと、仰向かされ唇を塞がれる。
それは、互いの顔を見なくても出来るような、馴染んだ動作であった。
情熱的で、少し荒々しい唇は、そのままカガリの首筋を這った。カガリは慌てて抵抗した。
ブラウスの裾から冷たい手が入り込んでくる。その冷たさに身をすくめて強張る身体をほぐすように、乾いた手の平は緩やかに曲線をなでた。
這い上がってくる何かを堪えるように、固く目を瞑っていると、いつの間にかブラウスのボタンが外されており、胸元を吸い付かれる。
我慢できずに、はあ、と吐息を零すと、白い蒸気が夜空に吸い込まれていくのが見えた。
手と唇が、何度もせわしなく上下して、理性と身体がどんどんほどけていく。何かを求めるかのように、アスランの着ているニットの二の腕の辺りをぎゅっと掴んだ。
すると、アスランは唇を離し、手をブラウスの裾から抜いた。
「あ……」
もの惜しげな声が出てしまい、アスランに笑われる。
恥ずかしくなって、軽く胸板を叩くと、「ごめん」と、本当に悪いと思っているのか思っていないのか、少し困っているような声が聞こえた。
明るいところに出ると、アスランはカガリのブラウスを器用に片手で止め、服の皺や髪の乱れを直してくれた。
「……帰したくないな」
先程よりも暖かくなった手を、柔らかい頬に這わせて、アスランが一人ごちるように言った。
どう返事をすべきか、気の利いたことも言えず悩んでいたが、アスランはカガリの背を押して家に入るように促した。
「早く、家に入った方がいい……」
後ろ髪が引かれる思いで、何度か後ろを振り返った。アスランは穏やかに微笑んで、カガリが家に入るところを見つめている。
いつまでも見ていたかったが、扉が閉まって、アスランの姿が見えなくなってしまった。
鍵を掛けて、独り家に帰るアスランを想った。
自分の部屋に入る途中、風呂に入ろうとするキラとすれ違った。
「カガリ、顔が赤いよ」
キラに指摘されて、思わず頬を押さえる。
「寒いのに走ったから」
カガリがそう言うと、「ふ~~ん……」とわざとらしい声でキラが応える。
「何だよ?」気に障ったせいで、思ったより尖った声が出てしまった。
「……別に」
キラは妙にニヤニヤした顔で、カガリの襟元を見遣ると、バスルームに入って行った。
そこを這った、熱い唇を思い出す。
カガリは、急いで自分の部屋の姿見で、襟元を確かめた。
胸元にはあるが、見えるような場所には痕は残っていない。シャツの皺も、不自然な縒り方をしていないと思う。
キラにからかわれただけだ。多分、恐らく、であるが。
「……なんだよ、キラのやつ……」
アスランがあんなことをするからいけないのだ。
でなければ、こんな恥かしい思いをして慌てなくて済んだし、アスランに触れられた記憶を何度も反芻して、身体を火照らせることもなかった。
今夜はきっと、アスランのことばかり考えて眠れないだろう。
「……ばか。アスランのばか」
すぐに会いにいける距離にアスランはいる。だが、近所だからこそ、この少しの距離が遠く思われてもどかしかった。
アスラン一人がいないことが、こんなに寂しい。それは、家族には言えないカガリだけの秘密だ。
【目次】
【あとがき】
テンションの波が激しいシリーズでしたが、馬鹿馬鹿しい話を、最後だけしっとりとまとめるのが好きなので。
これでこのシリーズは終わりですが、気が向いたら、アスランとカガリが付き合いだした話とか書いてみたいです。ほんっと馬鹿馬鹿しいやつ。
11/02、この話のアスラン視点(おまけ3)をアップしました。
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