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※アスカガ学パロ(高校生・幼馴染)
『つつゐづつ』 3-1
「カガリ・ユラ・アスハさんですか?」
カガリは、自分の教室に帰る途中、突然人に声を掛けられた。
誰だろう、と不思議に思ったが、彼女の外見から、今、学年で最も噂になっている人物であると気が付いた。
「あっ! もしかして留学してた!?」
「はい。ラクス・クラインと申します」
彼女は去年の夏から一年留学しており、本当は一学年年上なのだが、秋から隣のクラスに編入してきた女の子だ。何でも、珍しい桃色の髪をした、もの凄い美人だという噂が流れているが――確かに噂の通りである。
「あの……私に何か……?」
いぶかしむカガリに、ラクスは微笑んで、『 1-A カガリ・ユラ・アスハ』と名前が書かれた生物の教科書を差し出した。
「忘れ物ですわ。わたくしの机に入っていたんですの」
選択科目の生物で、隣のクラスの教室を使った時に、うっかり置いてきてしまったのだろう。
「あ、ありがとう」
「いえ、どういたしまして」
ふんわりと微笑む美少女に、カガリは頬を染めた。
「ちゃんと毎日持って帰って、予習復習をしないから今まで気が付かないんだ」横から眺めていたアスランが言う。
「うるさいなあ。ちゃんと、テスト前に勉強しているからいいんだ」
「それで、テスト前に慌てていたのではな……。普段からやっていれば、テスト期間中は確認するだけで済むぞ」
いつものお説教を始めるアスランに、少しうっかりしただけだろう、とカガリは頬を膨らませた。
その様子をくすくすとラクスに笑われてしまい、カガリは耳まで赤くなった。
ラクスは教科書が置き忘れられていると気が付いた時に、一度カガリのクラスを尋ねてくれたらしいが、生憎カガリは不在であった。その時カガリの外見を聞いて、もし会ったら渡そうと思っていてくれたらしい。
「わたくしの教室の前を通りかかられたので、ちょうど良かったですわ」
小さく手を振って、しずしずと教室に帰っていくラクスから、カガリは目を離せないでいた。
「……アスラン。あの子、すごく可愛いな……」
「うん。まあ……」
確かに彼女は美少女、それも十人中十人が美少女と認め得る美少女だろう。
白い肌に映える人形の様な顔立ちは愛らしいし、淑やかで上品な雰囲気は育ちの良さを思わせる。それに加えて、女らしい長い髪、華奢で小柄な体躯、鈴を鳴らす様な声。
男が夢に描くような、美少女だ。
(でも、俺は――)
アスランは、隣の少女を見た。
肩のあたりで跳ねて納まりの悪い金髪、美人とも可愛いとも違う中性的な顔立ち、女にしては低めの声、淑やかとは言いがたい雑な動作。
でも、よく見れば、つやつやした金髪は指を通したら気持ちが良さそうだし、顔立ちは整っていて、何よりその印象的な輝きを放つ琥珀の瞳には何度も目を奪われてしまう。アルトの声は心地よく響くし、快活で少々お転婆な振る舞いは、困らされることはあっても不愉快ではなく好ましいものだ。
「本当に可愛いなあ……。アスランも、ああいう子がいいのか?」
「いや、俺は……」
カガリが好きだよとは言えなくて、アスランは口ごもった。
モドル≪ ≫ススム
【あとがき】
一年生で選択授業が始まる高校の普通科は珍しいと思うのですが、いとこの通っていた高校がそうでした。
普通の公立高校で、ラクスみたいな子がいたら、良い意味でも悪い意味でも浮きまくってるだろうなあ……。