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※アスカガ学パロ(高校生・幼馴染)
『つつゐづつ』 1-3
さて、家に帰ったアスランだったが、やはりカガリのことは気になる。
親に通わされている塾の宿題も、全く集中できず、そわそわと時計を何度も眺めてしまう。
ふと気が付くと、「1+1」も「2+3」も、答えが全て「1」になっている。縦棒しか引かなかった鉛筆を、ころりと机の上に転がして、アスランは溜息を一つ吐いた。
どうせカガリのことだから、帰る時間になっても忘れているのだと思う。前に、一緒に遊ぼうと約束していたのに、カガリは違う友達に誘われて、アスランとの約束をすっぽかしたことがあった。
(そういうこなんだよな、カガリって)
思い出しながら、腹が立ってきた。しかし、嫌な思い出を思い出すと、カガリと一緒にいて楽しかった良い思い出も浮かんでくる。
もし、カガリが人知れず事故に遭ったり、悪い奴に連れ去られでもしていたら――。
そんな悪い予感に胸を騒がせていると、電話が掛かってきた。
電話は、カガリの母親からだった。まだ、自分の娘が帰ってきていないので、最後に娘と会っていたアスランに、どこで遊んでいたかを聞こうとしたらしい。
それを聞いて、いてもたってもいらなくなったアスランは、彼女との通話を一方的に切ると、一目散に御社へと向かって駆けて行った。
*****
カガリは、男を御社の境内へと連れて行った。ここなら、見晴らしがいいし、男の行きたい場所も見つかるに違いない。
「おじさん。みつかった?」
「いや……。青い屋根のお家なんだけどね、見つからないなあ」
「あれは?」
「あれ?」
「ほら、あっち!」とカガリが指を指してやっても、よく分からないようだった。
「おじちゃんとカガリちゃんは、背の大きさが違うからなあ」
そう言って、男はカガリを後ろから抱きかかえた。男とカガリの目戦の高さが同じになる。カガリは、もう一度方角を示してやる。
「おじさん、わかった?」
男は全く聞いていないようだった。
親切にしてやっているのに、全く話を聞かぬ男に、カガリは腹を立てた。
しかし、男はというと、だんだん息を荒げ始めた。無骨な手が、カガリの小さな身体を這い始める。カガリは、それを嫌だな、と思った。父親に身体を洗ってもらったりすることはあるが、このような嫌悪は感じたことはない。
「おじさん。もう、おりたいんだけど」
カガリは言ったが、やはり男は聞いていないようだった。
その時、男の後ろに小さな人影が現れた。
「アスラン?」
よく知る名前を呟くと、カガリを抱えている男が、ぎくりと身じろいだ。
男の手は、カガリのスカートの中にまで及んでおり、小さい女の子を抱っこしてあげているようには、見えない。アスランは、瞬時に彼が変質者であると悟った。
「こらー! カガリからはなれろ!」
アスランは、果敢に男に飛びついた。その衝撃で、カガリが男の手から落ちて尻餅を付いた。男はバランスを崩し、境内の階段から落ちそうになったために、咄嗟にアスランの襟首を掴んだ。体重の軽いアスランは、踏ん張ることができずに、男の重みに引きずられる。そうして、そのままアスランと男は縺れながら長い階段を転がり落ちて行った。
凄まじい衝撃が止み、ぎゅうっと目を瞑っていたアスランが瞼を上げると、カガリが泣きながら上から覗き込んでいた。
「……かがり……だいじょうぶか?」情けないほどに声は掠れて、弱々しかった。
「だいじょうぶじゃないよう! アスランが! アスランが!」
カガリは動転して、泣き叫んでいる。
(……おこったり、ないたりしているかおより、わらっているほうがかわいいのになあ……)
ぼんやりとそんなことを考えながら、カガリに怪我がないことを確かめる。視界の端で赤いものが流れたような気がしたが、瞼の重さに耐え切ることが出来ず、アスランは瞳を閉じた。
モドル≪ ≫ススム