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※アスカガ社会人パロ
『ご先祖様の言う通り』
1. 3(+1)=4?の同居生活 (2)
夜更けに、夢を見た。
ぺたぺたという足音が聞こえてくる。足の裏がひんやりと冷たい。どうやら、俺は新居のダイニングを裸足で歩いている。目が暗闇に慣れているおかげで、器用にテーブルやソファを除け、迷うことなく足を進めている。
どこに行こうとしているのだろう?
俺の身体は、俺の意思を伴わぬまま、ドアの前で止まった。――そこは、カガリの部屋だった。
俺は、扉をそおっと開けると、足音をしのばせ、部屋の奥にあるベッドに向かって行く。
……おいおい。他人の部屋に、それも女性が一人で寝ている部屋に、無断で入るのは良くないぞ、俺。
なんとも奇妙な夢だ。まあ、夢は総じて奇妙なものである。
さらに奇妙なことに、細い身体にかかったブランケットをまくり上げる。横臥していたカガリは、ごろんと仰向けになり、小さな唇から、すうすうと寝息を立てた。俺は、首の横に手を置いて、華奢な女の身体に圧し掛かった。
ちょっと待て! 何をしているんだ、俺!!
どうか想像していただきたい。夢とは言え、自分の身体が、自分の意思を超えた行動を取るという驚きを。ましてや、俺は日頃から女嫌いを標榜しているのである。夢は深層心理を表すというが、俺は無意識では、カガリによからぬことをしたいと考えていたのだろうか。
俺の顔が、カガリの顔に寄せられていく。
ちょ、ちょ、ちょーーっ! ストップーーーー!!!!
「だああああああああ!!!!!」
やけっぱちで叫ぶと、俺の下にいるカガリが、ぱちっと音がしそうなぐらい睫毛を上に上げた。琥珀の瞳が俺を映すと、驚きに見開かれる。
「――っきゃあああああああ!!!」
パニックを起こして、カガリも叫ぶ。
隣の部屋から、どたっという大きなものが落ちた時のような音がした。ぱたっ、ぺた、ぱたっ、ぺた、という音。それからドアが勢い良く開く音。もう一度、ぱたっ、ぺた、ぱたっ、ぺた、という音が次第に大きくなり、俺のすぐ後ろで止まった。
「何やってるのさ!」と叫んで、キラが俺を後ろから羽交い絞めにかかる。
それは、俺が訊きたいことだ! どうしてこんな夢を見ているのだろう!? 羽交い絞めにされて苦しく感じるなんて、なんてリアルな夢なのだろうか!?
「カガリから離れて!」
「できるならそうしている!」
キラに絞められそうになっていても、俺の身体はカガリに覆いかぶさろうと、四つん這いの態勢を取っている。
……まさか、まさか――?
「アレックス! お前かあ!!」
『ふふふふふ……お前が全く女に寄り付かんから苦労したわい』
「うるさい! くたばれ!」
『もう、くたばっている!』
とっとと成仏しろっ!!
「ねえ? 何言ってんの?」
背後から聞こえてきた声に、はっとする。振り返ると、片方だけスリッパを履いたキラが怪訝そうに首を傾げている。しまった……。
「あ~……寝ぼけちゃった、のかなあ……?」
……この言い訳は、自分でも非常に苦しいと言わざるをえないだろう。
と、その時、顎に何か固いものをぶつけられた。脳みそが頭蓋骨の中で、音を立てそうなほど振り切れる。
狭くなった視界に僅かに移りこんだのは、カガリが、両端が丸く膨れた短い棒きれを握っているところだった。
あれは、鉄アレイか? あれで殴られたのか?
鉄アレイなんかで殴られたら、下手したら顎が砕けてしまう。いや、死んでしまうかもしれない。
死なないことを願いつつ、身体の命じるままに、俺は目を瞑ることにした。
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