種ガンダム(主にアスカガ)のブログサイト
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※アスカガ・戦後
(タイトルは物騒ですが、死ネタではありません。)
『Please Kill Me Softly With Your Love.』 ― at dead of night ―
グラスの中で、氷が溶ける澄んだ音がした。
カガリの瞳の色にも似た酒の中で、小さくなった氷が、一度沈んでからまた水面に浮かび上がって来る。グラスにはあまり手は付けられておらず、付着した水滴が滴となって流れ、コースターを冷たく濡らしていた。
酒は憂いの玉箒とも言うが、今夜はそんな飲み方はしない。憂さを晴らすための酒ではないのだ。
ソファに二人並んで座り、日々感じたことをゆっくりと話合う。そうして、隙間を埋めて行く作業を続ける。アスランは、いつもならもっと濃いものを好むが、喋って渇いた喉には、氷で薄まった酒が心地よく感じられた。
そうして、グラスが空いた頃には、カガリは眠たそうに瞼を押さえていた。
「酔った?」
「これぐらいでは酔わないよ」
「疲れているから、酔うのが早いんだよ。眠いなら、もう寝よう」
負けず嫌いのカガリは、決して酔ったことを自ら認めないだろうから、認めやすいよう抜け道を示してやる。
「酔ってない!」
カガリは剥れて、グラスの中に酒を注いだ。
「カガリ」
窘めるように強く呼んで、グラスを遠ざける。
「まだ飲む!」
「駄目だ。最近、よく眠れてないんだろう。上手く眠れそうなら、もう寝た方が良い」
仕事が立て込んでいるからか、ストレスからか、カガリが最近、上手く睡眠を確保出来ていないことには気が付いていた。
グラスと酒瓶を片付けようと立ち上がる。だが、その時、小さくシャツの裾を引っ張られる感覚があった。
「……アスラン」
振りほどこうとすれば、出来た。
しかし、その声で名を呼ばれると、まるで心臓を一突きされたように動けなくなった。
いつもより高く、舌ったらずにも聞こえる声。
おそらく、カガリ自身も無意識に出しているのだろう。気を許している時にだけ出るその声は、アスランの優越感と庇護欲を擽る。
「いいのか、私が寝ても……? なあ、あすらん……」
甘い陶酔が胸を侵して、息が苦しくなった。
――きっと、自分は、この声を聞くためなら、何でもするに違いない。
そうして、アスランの身体は、カガリと共に、ソファへと沈んだ。再び、その声で名を呼ばれるために――
【あとがき】
携帯で書いたものを、幾分か修正。
カガリはこんなこと言わなさそうですが、アスラン限定ってことで。
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