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※アスカガ社会人パロ
『ご先祖様の言う通り』
1. 3(+1)=4?の同居生活 (3)
目が覚めた時、何故か俺はダイニングの床に寝かされていた。
酷く目が回る。白い蛍光灯が、三つにも四つにも分裂して見えた。
「気がついたようだね……」
「き、ら……?」
身じろぐと、身体の後ろで、腕と脚が何かで固定されているのが分かった。
眩暈を堪えながら、上体を反らし、自分の後ろを見ると、手首と足首にガムテープがぐるぐる巻きになっている。カガリに気絶させられてから、ここまで運ばれたのだろうか。
それを確認したところで、俺の気力は尽きて、床に這いつくばってしまった。
そんな俺の様子を、紫と金茶の冷たい二対の瞳が見下ろしている。
「アスラン……。信じたくないけど、君がカガリにあんなことをするなんて……」
「……誤解だ」
「何が誤解だって言うの!?」
「寝ぼけて、部屋を間違えたんだ」
「ウソだ!」
そう、その通り。これは嘘だ。
自分でも分かっているが、もう少しマシな言い訳が思いつかなかったのだから仕方がない。
「観念して、本当のこと言いなよ」
……本当のこと、か。
「本当のことを言って、信じてくれるのか?」
「信じるも何も、答えは一つしかないでしょ」
ああ、これは駄目だ。キラの言う“本当のこと”とは、カガリを襲ったことを認めて、謝罪しろということだ。そんな濡れ衣を、認めるわけにはいかない。
しかし、どうする? 誤魔化すにも信じてもらえないし、本当のことは、もっと信じてもらえないだろう。
だが、俺に、悩むだけの時間は与えられなかった。
『お嬢さん。私はあなたの美しさに心奪われ、あのような衝動に駆られてしまったのです』
ぅぉおおおぉおいっ!!
「ちがう! これは俺が言っているんじゃない!」
『申し訳ない。素直に気持ちを伝えられない、この切ない男心を、どうか分かっていただけないだろうか』
「黙れ、アレックス! お前のせいで、散々な目にあった!」
『ご先祖様に向かって、黙れとは何だ!』
「うるさいから黙れと言って、何が悪い! 大体、何だ? この気色の悪い台詞は? そんな台詞を、俺の口を使って話すな!」
「アスラン、さっきから、何一人で喋ってんの?」
はっと、気がつくと、キラとカガリが怪訝そうにこちらを窺っている。
「あ……いや……だから、その……仕方がないから本当のことを話すが、さっきのは、俺がやったんじゃなくて、俺に取り憑いたアレックスって奴がやったんだ」
双子は、思わず互いの顔を見合わせてから言った。
「君、しばらく会わないうちに、ずいぶん面白い冗談言うようになったよね」
「キラ……。本当に、この人大丈夫なのか?」
……やっぱり。頭がおかしい奴だと思われている。
俺だって信じたくはない。自分に、ザラ家の始祖を名乗る霊が、取り憑いているだなんて。
大体、俺は、エンジニアなのだ。科学で全てが解決するとまでは思わないが、科学の信望者であるこの俺が、こんな非科学的な現実と向き合わなければならないだなんて、なんという屈辱。プライドはズタズタだ。
そんな時、玄関のベルが鳴った。
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