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※アスラン・ディアッカ(アスカガ・ディアミリ)・社会人パロ

『俺の友達が落ち込んでいる。』





 仕事を終え、営業課の前を通りがかった時のことだった。
 誰もいない薄暗い部屋の中で、男が一人、椅子に腰掛けていた。薄暗い部屋の中でも、彼の髪は鈍く光を放っている。その髪色から、男が、営業一課のディアッカ・エルスマンであることが分かった。
 電気も点けずにぼうっと呆けているので、気になって部屋を覗いてみると、彼は、何故だか落ち込んでいるようだった。
「ディアッカ。帰らないのか?」
 俺が声を掛けると、ディアッカはびくりと肩を跳ね上げた。
「……ああ、びっくりした。アスランか……」
 彼は、後ろに撫で付けている髪に指を差し入れ、どこか投げやりな様子で掻き回した。はらりと、癖の強い毛が額に落ちる。
「まあ、ちょっとな……。考え事してて……」
 俺には、思い当たる節があった。
「女か?」
 何故分かった、とディアッカが不思議な顔をした。
「顔に書いてあるぞ」
「……マジかよ」
 お前に見透かされるなんてな~、と憎まれ口を叩くと、大きな手で浅黒い顔をつるりと撫でた。
 ディアッカは、くよくよと悩まないタイプの人間だ。いや、悩むこともあるのだろうが、悩みすぎて後に引きずらないようにしているのだ。そんな彼に、あのような深刻な顔をさせることができるのは、恋人であるミリアリア・ハウ嬢だけに他ならない。
「それで?」
「……んあ?」
「いや、どうしたのかな、と思って……」
「うわ~、何? どういう風の吹き回し?」
 皮肉ぶった顔で、ディアッカは言った。
 弱ったところを曝け出したくないのだろう。俺達は、ベタベタと友達ごっこをするような間柄ではなかったから。
「茶化すなら、もういいよ」
「……ごめん」
 呆れたように言うと、彼は素直に謝ってきた。一応、こちらの誠意は伝わったらしい。
 俺達は同期入社だった。今は、それぞれの適正に合わせた部署にいるが、入社当時は、共に同じ部署に配属されて働いていた。同じ年数を同じ会社で過ごしてきただけに、それとは意識しない間に、奇妙な連帯感というものが出来上がっている。今までに沢山の同期が辞めていったが、お互いなんとか生き残ることができた。いわば『戦友』と言っても差し支えないだろう。
 とは言え、このようなプライベートのことを話すのは照れくさい。それも恋愛の話なんて。
 ディアッカは、最初はまだ躊躇いが取れないのか、どこか自嘲気味に話していた。
 だが、俺が真面目に耳を傾ける様子に感じる所があったのか、最後には洗い浚い打ち明けていた。

「『アンタのこと好きなのか分からなくなってきた』だって。そんなこと言われて、俺どうすりゃ良いの?」
「彼女はその……、前の彼氏のことを?」
「随分長いこと、付き合ってたみたいだからな。最後も、特に嫌いになって別れたわけでもないらしいし……。俺とは、喧嘩ばっかになるから嫌になったって」
「でも、向こうとヨリが戻ったというわけでもないんだろう?」
「まあな。まだ、『一応』付き合ってはいるよ」
「……『一応』って」

 どうやら、かなり弱っているらしい。
 参ったな。こういう時、どういう風に声を掛けて良いのか分からない。
 俺の頭には、ありきたりな慰めの言葉が浮かんだ。
 ――もう、そんな女、放っておけよ。
 いや、駄目だ。
 ――ミリアリアの他にも、女はいるぞ。
 いや、もっと駄目だ。
 慰めになんか全然なっていないじゃないか。
 そもそも、彼女がディアッカをどう思っているのか、そして、彼女がこれから先、ディアッカとどうしていきたいのかが分からないのだ。
 こちらの気持ちをきちんと伝えて、そして、これからどうするのか、二人で話し合うべきだとは思うのだが……、それが難しいからディアッカも悩んでいるのだろう……。
 ……駄目だ。どうアドバイスすべきなのか、全く分からない。
 そんな俺の様子を察して、ディアッカが言った。
「アスラン、ありがとな。話聞いてもらっただけで、けっこう楽になったわ」
「……あ、いや」
 相談に乗っている側が、逆に気を使われてしまった。彼はこれで案外、視野が広く、他人のフォローを買って出ることも多い。他人に甘えることが難しい、損な性格をしているとも言える。
 俺は、不甲斐ない自分を恥じた。
 その時、ふと降りてきた沈黙を切り裂くように、携帯の着信音が鳴り響いた。二人同時に、スーツのポケットを探る。
「あ、俺だ」
 俺は、ディアッカに断って、電話に出ることにした。



「あ、もしもし? カガリ? ごめん、遅くなって……ん? あ、そう、ちょっと仕事が長引いた。うん、うん。いつもと同じ店で良いか? 俺の家にも近いし……今日泊まっていくだろ? 『何考えてるんだよ』って、多分カガリと同じことなんじゃないか? ……ふふ……。じゃあ、待たせて悪いけど、先に店に入っててくれるか? ああ、また……」



「すまないな、ディアッカ……」
 電話を切り、彼の方へと振り返る。
 彼は、ぶるぶると肩を震わせていた。……どうしたというのだろう?
「――っないわ! お前、ほんっっとないわっ!!」
 彼はそう叫ぶと、デスクにうつ伏せになって泣き出した。

 何故、彼は泣いているのだろう。俺には、よく分からなかった。















【あとがき】
アスラン・ザラには、しれっと惚気ていただきたい。
ちょっと、タイトルがしっくりこないので、後から変えるかもしれませぬ……。→5/31タイトル変更しました。

私の中では、ディアミリは喧嘩ップル。
トールに対してはミリィがお姉さんぶってて、基本は穏やかな付き合いなんだけど、ディアッカに対しては、甘えてキツイこと言って、喧嘩して欲しいのです。



 

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今更ながら、種ガンで二次創作。
いつかは、サイトになるはず……

だったけど、なりませんでした。
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