種ガンダム(主にアスカガ)のブログサイト
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※アスカガ・運命
――気をつけて
そう言って、彼を送り出した。 別の言葉を呑み込んで。
Other Words
寝台から見上げる空は、見慣れぬ形に切り取られている。
今日の空は、いつもに増して青かった。ここ暫くスコールには御目にかかっていないからだろうか。青が押しかかってくる程に、濃密だった。
からりと晴れ渡り、海からは心地好い貿易風が吹いてくる。オーブで最も過ごしやすい季節。人々は、風にその身を遊ばせながら、良き日の訪れを待っていた。
カガリは、窓越しに空を見上げては、溜め息を吐いた。その向こうにいる人のことを思って。
後悔しているのかと問われれば、間違いなく後悔はしていても、正直には答えられない。カガリは、自分のしなければならないことを、自分の意思で為したのだ。
「…………」
声は掠れて、上手く音を為さなかった。それでも、カガリは確かに聞いたのだった。耳にこびりついてしまった自分の声を。
呼べば必ず来てくれたのに、ここでは、その名を呼ぶことすら出来ない。
彼とは、会えないまま、別れてしまった。しかし、会えたとしても、別れを言う勇気は無かった。カガリに出来たのは、時計の針を戻して、記憶に会いに行くことだけだ。
あの痛々しい程に、真剣だった緑の瞳は、きつく胸を締め付け、身が蕩けるような優しい声は、容易く感傷に浸らせる。
独りでは、夢も希望も繋ぎ止めることは出来ず、交わした約束は、心に痛みを残して霧散した。
父の罪を背負う彼には、言えなかった。それが彼の意志であれば、やはりカガリは、不安を押し隠して、その背中を押すのだろう。
あの時、呑み込んだ言葉を、伝えるべきだったのだろうか?
否、言葉にしなければ、それはないに等しい。
最初から、別の言葉など存在しなかったのだ。
暫くして、部屋の扉が叩かれた。この神経質な音は、ミセス・セイランのものだ。
カガリはのそりと寝台から起き上がり、義母となる女性のために扉を開けた。
良き日が来れば、カガリは臣民に祝福されて、『幸せな花嫁』になる。
【あとがき】
携帯で書いたものを、幾分か修正してアップ。
とあるJ-POPのタイトルを拝借したのですが、確かめたら、全然違うタイトルでした。(勘違い)
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