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種ガンダム(主にアスカガ)のブログサイト
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※アスカガ人間×悪魔パロ
『グレープフルーツ』



11.


 どこか気だるさを感じさせる身体を起こして、アスランは昨夜の充足の名残を噛み締めていた。
 隣を見れば、金の髪をした少女が眠っている。しかし、普通の少女と違って、彼女の頭には黒い触覚が生えている。昨夜、アスランはその触覚に何度も愛撫を施したのだった。
 触覚を起点にして、順に視線でなぞっていく。
 艶々して、指どおりの良い髪。滑らかな額。形の良い眉。印象的な琥珀の瞳を隠す薄い瞼。頬に影を落としている睫毛。まろやかな頬。こぢんまりと整った鼻。それから、無防備に開いた唇。
 あどけなく寝息を紡ぐ唇は、口付けを請うているように見えた。その甘さを、充分過ぎるほどに知っている。
 思うままに口付けると、やがて、カガリが目を覚ました。
 焦点を結ばぬ瞳はアスランを認識すると、優美な曲線を描く。しなやかな腕に引き寄せられ、再び唇を合わせた。時折合わせられる琥珀の瞳は、うっとりと蕩けている。
 口付けは、永遠に続くかと思われたが、無粋な目覚ましの音に遮られてしまった。大学に行く支度をしなければならない時間だ。
「行かなきゃ……」
「ん……。行ってらっしゃい」
 カガリは、まだ疲れているのだろう。ゆったりと寝そべる彼女に、「カガリは、ゆっくりして」と言い置くと、手早く服を身に付け、シャワーを浴びに行く。
 目を覚ますために熱い湯を浴びている最中も、昨夜のことが何度も思い出され、だらしがなく顔が緩んでしまう。
 だが、すっかり昨夜の名残が身体から消えると、以前よりもっと寂しくなってしまった。


 自分の中で何かが変わっても、世界は、いつもと同じように朝を向かえる。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 それから数日は、アスランはカガリと、蜜月と言うべき日々を過ごした。
 一緒に食事をして、他愛もないことを話し、夜は同じ寝床で身体を休める。

 夕食後、風呂に入ってから、二人でテレビを見ている時だった。互いの身体にボディバターを塗り合いじゃれあっていると、クリスマスケーキの特集が始まった。
「なあ、アスラン。クリスマスケーキが食べたい」
「悪魔もクリスマスを祝うのか?」
「この国の人間に、宗教なんて関係ないだろ?」
「まあ、そうだけど……」
 この国の人間は、確固たる信仰を持たない。現世利益と来世利益だけを考えて、種々様々な宗教を無節操に自国の文化に取り入れてきたため、聖誕祭は、仲間内で騒ぐための口実になっている。中でも、カップルにとっては、外すことのできないイベントだろう。
「私たちにとっても、クリスマスは特別なイベントになってる。人間達が欲望丸出しでクリスマスを謳歌しているから、悪魔にとっても仕事がしやすいからな」
 なるほど、とアスランは思った。喜びに溢れた日だからこそ、失望は大きい。光が濃くなれば、闇も濃くなるというものだ。
「カガリも、仕事をするのか?」アスランは、ふと、不思議に思って尋ねた。
「……しない。アスランと一緒にケーキ食べたい」
 カガリの答えは、アスランを大いに満足させた。
「じゃあ、ケーキ予約しておく」
「白くておっきいのな! サンタさん乗ってるのがいい!」
「……二人で食べきれるサイズな。あと、サンタさんは、甘いだけであまりおいしくないよ」
 いちいち現実的なことを口にせずにはいられない男である。カガリは、そんなアスランに、むくれて異論を示している。
 だが、口ではそう言っても、カガリのために無駄なことをするのは、何の衒いもなく楽しいと思うようになっている。アスランは、カガリを喜ばせようと、生クリームのたっぷり乗っかった大きなクリスマスケーキを予約した。もちろん、砂糖菓子のサンタクロースも付いているものだ。きっと食べ飽きて辟易しても、二人なら楽しいに違いない。



 この時のアスランは、他愛もない日々を満ちたりたものと感じていた。だが、それは、この数日間を振り返って惨めで泣きたくなる未来の自分を、微塵も予測していなかったからだ。

 ――蜜月が潰えたのは、十二月とは思えぬほど麗らかな日のことだった。






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今更ながら、種ガンで二次創作。
いつかは、サイトになるはず……

だったけど、なりませんでした。
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