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※アスカガ学パロ(高校生・幼馴染)
『つつゐづつ』 8-4
カガリの強い要望で、二人はアスランの部屋で話し合うことにした。二人が、ここに揃ったのは、あのアダルトDVDを見た時以来のことだ。
「ほら! ここ座って! 話をしよう!」
カガリはベッドに腰を掛けて、アスランにも隣に座るように言った。自分の上手く言葉にならない気持ちを、じっくりと腰を据えて聞いて欲しかったのだ。
だが、場所が場所だけにアスランは戸惑った。
(何故、ベッドなんだ……)
以前、そのベッドで際どくなったことを覚えていないのだろうか。アスランは、自分の理性を保つためにも、少し離れて座った。
「なんで離れて座るんだよ! あ、もしかして、私汗臭い?」カガリは、くんくんと自分の身体の臭いを嗅いだ。
「違う!」すかさず、アスランは言った。
余計な誤解を招きそうだったので、隙間を詰めることにする。
「お腹、大丈夫か? 思いっきり、殴ったから」
「ああ……」
本当は、まだ少し痛い。もしかしたら、痣になっているかもしれない。
「あのな。話を聞いて欲しくて……。ええと、まず……やっぱり、アスランが危ない目に遭うのは嫌だから、無理に守ってなんか欲しくない」
カガリに必要とされていないのは分かっているが、やはりはっきりと言われるのは虚しい。
「そうか……。カガリには、もう俺は必要ないのは分かっていたんだ」
「ちょっと、待て! そんなこと一言も言ってない!」
「……カガリは、ラクスが好きなんだろう?」
優しいカガリは、アスランを切り捨てないだろう。だが、これからのカガリに、アスランは不要な存在だ。
ずっと、自分の作った箱庭が窮屈だった。だから、壊した。
しかし、カガリがアスラン以外の誰かを求めて箱庭を出て行こうとした時、アスランは衝撃を受けた。カガリを 元の箱庭に安住させ、ずっとアスランだけのカガリでいて欲しいと思った。
なんて身勝手だったのだろう。カガリを守っている気分でいたが、自分がそこから離れられなかっただけだったのだ。
「うん。けど、多分そういう好きじゃない」
「じゃあ、好きでもない相手に、胸を触らせたのか?」
「見ていたのか?」
アスランの沈黙が、そうだと語っていた。
いつもの様にクラスの女友達とご飯を食べず、木枯らしの中、寒そうな場所に一人で座っていたカガリが心配で見ていた。
途中で、ラクスが話し掛けたのも知っている。
それから、カガリがラクスを促して、その膨らみに手を添わせたことも。
アスランとでは乗り越えられなかった壁を、ラクスとなら乗り越えることができたのだ。眩暈がしそうなほどの嫉妬を感じたが、これでもう諦めるしかないのだと、静かに悟ることもできた。
「お前だって、触っただろう?」
「そ、それは……」
アスランの白い頬が赤く染まる。
「お前、いくらエッチなDVD観たからといって、ああいうことは好きな人にしか、しちゃいけないんだぞ」
「別に、そういうDVDを観たからじゃない! ――って、あれがどういうものか分かってたのか?」
「……なんとなく」
「……そ、うか…………」
アスランは、もうカガリに合わせる顔がないというように背を向けると、「ごめん。わざとじゃなくて、何て説明したらいいのか分からなくて……」とかなんとか、口の中でごにょごにょと呟いて項垂れた。
「もう、いいよ。というか、あれは私が悪かったんだと思う。悪かったな」
「いや、俺の方こそちゃんと止めなくてごめん」
「何で、あんなことしたんだ?」
「……分かれよ」
「分からないから聞きたいんだ」
「…………」
「こっち向けよ。ちゃんと話をしよう」
アスランは、カガリに背を向けたまま、黙って首を横に振った。
背中越しに、呆れたような大きく溜息が聞こえてきて、背中がびくりと震えてしまった。
「こっち向かないと、悪イコトするぞ」
「え……?」
気が付いた時には、カガリはアスランの真横に移動していた。
そして、頬に柔らかい感触。
「え? え? え?」
「……ばか」
突然のことに驚いて隣を伺うと、カガリの頬が赤く染まっている。
「こういうことは、好きな相手にしかしちゃいけないんじゃなかったか?」
「……ばか」
まるで、照れているかのようにカガリが剥れる。
それを都合の良いように、解釈しても良いのだろうか。
「もうちょっと、悪イコトしようか……」
「……ばか」
カガリを抱きしめると、大人しく腕の中に納まった。その熱と感触に酔いしれる。
「カガリ……」
アスランが名を呼ぶと、カガリが顔を上げる。ふっくらと健康的な唇に吸い寄せられるように顔を近づけると、カガリが身を捩った。
「待って。その……」
「……嫌?」
アスランの切なげな声に、カガリは首を振る。
「違う。嫌じゃないんだ。アスランはこういうことがしたいだけじゃないんだよな。ちゃんと、その……」
「好きだよ」
カガリの顔が、ぽんっと音を立てるように赤くなる。
「そ、そうか……。なら、いいんだ。……あ、で、でも! ゆっくりだぞ! いきなりは駄目なんだからな!」
『好き』と言ってしまえば、カガリは身体を委ねてくれるのか、と少々呆気に取られた。だが、よくよく考えると、その言葉を伝えたことがなかったのかもしれない。伝えたくても、伝えられなかった。アスランにとっての『好き』は、カガリに触れたいという思いと切り離すことができなかったから。
「……ところで、カガリは? 俺だけ?」
「…………う……」
「うん?」
今まで、振り回されていたのはアスランの方だったから、こうしてカガリをからかうのは、新鮮で、楽しい。
「……す、……き、だと思う。多分」
「……多分なのか?」
そこは、はっきり言って欲しいのだけれど――。あまり、面白くない気分だ。
「その……よく分からなくて……。でも、アスランに触れられるのは嫌じゃないんだ。アスランが、少しずつしてくれるなら、……むしろ、そうしてもらっても良いというか……」
「……大事にする」
アスランがそう言うと、カガリはアスランの前髪を梳いた。
「……ありがとな。本当はずっと、大事にしてくれてたんだよな。気がつかなくてごめん」
髪を梳いた細い指が、こめかみを這う。そこには、ケロイド状になった古い傷跡があった。今は、もうほとんど目立たないものになっているが、十年前は、何針も縫わなければならなかった大怪我だった。
カガリがそれを悔いているようだが、アスランにとっては名誉の負傷だ。
アスランが伺うようにしてゆっくりと顔を近づけると、カガリは瞳を閉じた。
重ねた唇の柔らかさに、理性が飛んでいく。少しずつすると、約束したのに。
ベッドに押し倒し、頤を引き寄せてカガリを追い詰める。舌を思うままに絡め、温かい口腔を探る。角度を変えようと唇を少し離すと、カガリが首を捩った。
二人の唇を繋ぐ銀の糸が切れて、カガリの頬に流れる。カガリは恥ずかしそうに、頬を拭った。
「それ、あんまり好きじゃない。もっと、優しいのがいい」
「ん? こう?」
唇の表面を啄ばむようにしてやる。
「……ぅん……ね。もうちょっと」
「……ん」
何度も角度を変えながら、慰撫するように唇を重ねた。
「……ふ……ん……なんか、ふわふわする」とろんと、夢見るような瞳で、カガリが言った。
「うん……」アスランも、同じ気持ちだった。
固い胸板に顔を埋めたカガリを、万感の想いで抱きしめる。
さて、どうしようか?
『もうちょっと』とは、どこまでを指すのだろう?
薄い背中を撫でながら、目の前に迫った滑らかな首筋に噛み付きたい衝動を、アスランは必死に堪えるのだった。
モドル≪ ≫あとがき
【あとがき】
読んでいただいてありがとうございました。
せめて、11月中には終わらせたかったのですが……
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