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※アスカガ学パロ(高校生・幼馴染)
『つつゐづつ』 8-1
今朝、カガリは、アスランを無視して、家を出てきてしまった。
『私は怒っているんだぞ』と、アスランに訴えたかったからなのだが、それは失敗に終わった。彼は、カガリに置いていかれたことなど気にしていないとでも言うように、振舞っている。
(なんだよ……。アスランのヤツ……)
カガリには、アスランが分からなくなっていた。
アスランと気まずくなってから、カガリは譲歩の姿勢を見せてきた。けれどもアスランは頑なで、歩み寄るどころか、ますます遠のいていく。
そして、昨日。
――そうだよ。幼馴染なんだよ。だから、カガリは俺が守るんだ。
――別に、喧嘩ぐらいで死んだりしないし。カガリが危ない目にあったら、ちゃんと助けてあげることぐらいできる。
そんなことを考えていたのかと思った。
今まで一緒にいて、アスランがそんな使命感を持っていることをカガリは知らなかった。だからこそ、さらにアスランが分からなくなった。
今まで一緒にいたアスランは、本当のアスランではなかったのだろうか。
それに、アスランがカガリを守りたいと思っていてくれていたのだとしたら、どうしてアスランはカガリのトラウマに触れるようなことをしたのだろう。男性に、性の対象にされることは、不快だ。すごく、気持ちが悪い。なのに、どうしてあんなことを……。
分からなかった。
だが、何にせよカガリが怒っているのは、アスランがカガリを守ると思い定めていることだった。無茶をして、アスランは十年前に大怪我をしたのだ。幼馴染だからと言って、アスランが身を呈してまでカガリを守る必要などないのに。それを嫌だと思っていることは、きちんと理解してもらわねばならない。
しかし、カガリが怒っても、アスランは全く堪えていないようだった。今までのアスランなら、カガリが怒れば必ず追いかけてきてくれていたのに。
もう、何もかもが分からなかった。
「カガリ! ちょっと、聞いてよ、マユラがさあ~」
「あ~! やめてよ~! まだ好きとかそんなんじゃないってば!」
「……え? なに?」
一人考えに耽っていると、友人達が何やら騒いでいる。
どうやら、マユラは駅前の書店の店員に片思いしているらしく、連絡先を訊いたとか、訊いてないとかいうことで盛り上がっているようだった。
「聞いてなかったの~?」
「あ、ごめん……」
「まあ、カガリにはザラ君がいるもんね」
「あ~、うんうん。ぶっちゃけ、他の男なんて目に入んないでしょ。ザラ君の方がカッコいいし」
また、アスランの話である。みんな、カガリはアスランと恋人関係にあるのだと勘違いしている。彼女達には、以前にも何度か否定したことがあったのだが、どうも信じてもらえないようだった。
ジュリとアサギの二人は、アスランが女子の理想をどれほど体現しているかという話題で盛り上がっている。
「ちょっと~! 本屋のお兄さんもカッコいいもん!」
しかし、マユラは、そんな友人二人の見解に納得いかぬようだった。否定はしても、駅前の書店員が気になっているらしい。
「なんだよ、マユラ。結局、その本屋の店員に気があるんじゃないか」
カガリが指摘すると、マユラはやっぱりムキになって否定する。
(もしかして、私もこんな風に思われているのか?)
だとすれば、カガリが否定すれば否定するほど、ただ照れを隠そうとしているだけで、本当はアスランと恋人同士だと思われているに違いない。
(どうしたものかな?)
アスランと気まずくなっていることを知られれば、面白おかしく痴話喧嘩か何かのように喧伝されてしまうかもしれない。ラスティにも気が付かれてしまったように、カガリは分かりやすい性質なのだ。
そういえば、アスランから距離を置かれてしまったことを、彼女たちに相談していない。それは、いつも一緒にいる友人達に、アスランにキスをされたり、胸を触られたりしたということを告げるのが恥ずかしかったからなのだが。――なんとなくではあるが、それは秘密にしておかなければならないと思っていたのだった。
だが、一人だけ、それを自ら告げてしまった人がいた。
カガリが、うっかり口を滑らせてしまったのだが、彼女はそれに驚いたり茶化したりすることはなかった。ただカガリにも解けなくなった縺れた感情を、ゆっくりと解きほぐしてくれるような心地良さがあった。初対面に近かったから、かえって話しやすかったということもあるが、やはり、彼女の持っている雰囲気がそうさせたのだろう。
(ああ、そうだ。ラクスに会いに行こう……)
カガリは、そう思った。
モドル≪ ≫ススム
【あとがき】
ムウ・ラ・フラガの立場なし。
まあ。普通、先生には相談せんわな……。