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※アスカガ社会人パロ
『ご先祖様の言う通り』
2. こんにちは、ご先祖様 (2)
床に倒れこむ寸でのところで、ラクスを抱きとめる。何度も名前を呼んで、意識を確かめたが、瞼は固く閉じられ応えることがない。
彼女の青白く生気がない顔に俺はぞっとした。
「どうすればいいんだ!?」
病院にでも運ぶべきか? だが、病院で何とかしてもらえるのか?
とにかく、納戸を出てリビングのソファにラクスを横たえ、クライン家に電話しようとすると、服に何かが引っかかった。見れば、ラクスの白い指が、俺の着ているグレーのスウェットの裾を掴んでいる。
「ラクス!? 良かった、気が付いたのか!?」
ラクスは、どこかぼんやりとした焦点の合わない瞳で、俺を見た。
「ラクス――?」
俺の声に応えず、ふらりと立ち上がって、自分の身体を不思議そうに見下ろしている。
何か様子がおかしい。
彼女の顔色は依然として血色が悪く、虚ろな青い瞳がゆるゆると俺の顔を見上げた。かさかさに乾いた紫色の唇には、桃色の長い髪が一筋引っかかっている。
そのおどろおどろしい佇まいに、冷や汗が止まらず、皮膚が粟立った。
閉じた唇が、ゆっくりと開かれ、髪がはらりと落ちる。
ごくり、という嚥下する音が、自らの頭蓋に大きく響いた。
『アスラン! 早く妻を娶って、子作りしろ!』
「はあ!?」
お、おい……ラクス。大丈夫か?
いきなり倒れたと思ったら、いきなり突拍子もないことを言出すラクスに、俺はどうすれば良いのか困惑することしかできない。
「止めて下さいな」
『頼む! ザラ家の存亡がかかっているんだ。君が霊媒体質で本当に助かった……。アスランに女嫌いを直すように言ってやってくれ!』
「でも、アスランの場合、手遅れではありませんか?」
『そんな……!!』
「本人にどうこうする気がない以上、周りの人間にはどうすることもできませんわ。水を飲もうとしない馬に、いくら水を飲ませようとしても無駄と言うではありませんか」
『じゃあ、君がアスランと結婚してくれ! 幼馴染だし、気安い仲だろう?』
「わたくしにも、選ぶ権利――――コホン。もとい、個人の権利というものがありますわ」
『むう……それは、そうだ……。だが、こっちも譲れんよ!』
「では、直接アスランに取り憑けばよろしいのではありませんか?」
『そんなことができるのか?』
「できると思います。霊媒体質かそうでないかは、単に、霊が乗り移ろうと思う人間か、そうでないかの違いでしょうから。何故か痴漢に会いやすい人や、道を聞かれやすい人がいるのと同じです」
ラクスはぶつぶつと一人言を言い出した。それはまるで、ラクスとラクスの中にいる“誰か”が会話をしているようにも見えた。俺は、そのラクスの奇妙な一人芝居をただ見ていることしかできなかった。
それにしても、何か聞き捨てならない内容を話していなかったか――?
「おい! ラクス! もしかして、“誰か”いるのか!? 俺に取り憑くとか、取り憑かないとか……そんなの、まっぴら御免だぞ!」
「もう遅いですわ」
「え……?」
突然肩が重くなくなった。それは、見えない何かが肩にぶら下がったような感覚で、俺はその重さに耐え切れず、足元をふらつかせた。内臓が縦に激しく揺さぶられ、目の前の景色がぐるりと反転したかと思うと、次の瞬間には真っ暗になった。
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