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※キラ・アスラン(アスカガ)・日本風大学生パロディ
『プレゼント ~ From Cagalli To Athrun ~』のおまけ的短編
(本編をお読みになってから、こちらをご覧下さい。)
静かな部屋に、金属が擦れる音が、微かに響いている。
ベッドに横たわり、雑誌を眺めていたキラは、床に座ってネジを閉めている幼馴染みの方を見遣った。
「アスラン、来週はうちに来るんでしょ?」
「うん。夕飯に、お邪魔させて貰う」
来週の土曜日は、幼馴染みであるアスランの誕生日会だ。彼が久しぶりに夕飯を食べに来るというので、キラの母親は大張り切りだ。
「カガリ、最近何か言ってた?」
「いや、特に……。土曜日の六時からに決まったってぐらいかな」
「そう……」
――何やってるの、カガリ。
キラは、双子の姉に苛立った。
「アスランさー、今何か欲しいものないの?」
「ん? 誕生日プレゼントならさっき貰っただろ? 音声ソフト、助かってるよ。これで、このハロも歌えるようになるな」満足そうに、丸いペットロボットを撫でる。
「いや、そうじゃなくて……。別に訊いてみただけだよ」
「何なんだ一体――あ、分かった! お前、自分の誕生日の時に、高い物ねだろうとしてるんだろ? 残念だが、その手には乗らないぞ」
「そんなんじゃないってば!」
剥きになるキラだったが、アスランは飄々とした顔をして、全く相手にしなかった。キラを出し抜いてやったと、良い気になっているのだろう。
――違うってば。また、カガリが変な物を贈らないか心配してやってんのに。
幼馴染みだから、彼らが誕生日の度に、何を贈り合ったのかは全て把握している。
カガリは、たまたまポケットの中に入っていたキャンディ、要らない雑誌の付録、もう使わなくなったペンと、愚にも付かない物を贈っている。
一方、アスランは、キラの協力によって、カガリの欲しいものを与えていた。尤も、今年は自分で選ばせた所、醤油差しという何とも珍妙な選択をしてしまっていたが……。
――二人共変な物を贈り合っているって所は、一緒なんだけど……。
それでも、相手のことを考えているだけ、アスランの方がマシではないか。
アスランは考え過ぎて空回りするけれど、カガリは考えていなさ過ぎる。キラは、この辺りに、二人の気持ちの落差があるような気がしてならない。
一応、キラはこの件に関して、カガリにも働き掛けてみたのだ。――但し、結果は、はかばかしくなかったが……。
「わあー、タイヘンだー! もうジューガツじゃないかー!」
キラは、カレンダーを見ながら、カガリにそれとなく伝えた。勿論、『それとなく』と思っているのは本人だけで、もし彼が役者ならば、八百屋に売っている白い根野菜に例えられたに違いない。
「……そうだな。もう、今年も終わっちゃうな」
「そーだね。でも、その前に、イロイロ、イロイロあるんじゃないかなー?」
「……クリスマスとか?」
「それもあるけど、もっと前だよ、ま・え!」
「……文化の日?」
「違うよ! 日にち的には惜しいけど、もう少し前!」
「十月って、体育の日ぐらいしかないんじゃないか?」
「そうじゃない! 休日から離れてよ!」
「もー、何が言いたいんだよ。私は、これから出掛けなきゃいけないから、忙しいんだ」
「何処行くの?」
「買い物」
「な、何買うの?」
――アスランのプレゼントだよね? 流石のカガリでも、彼氏の誕生日プレゼントは、ちゃんと考えて買うよね? ね? お願いだから、そうだって言って!
祈るような気持ちで、キラはカガリを見つめた。
しかし、カガリの返答は非常に素っ気ないもので、「……何だって良いだろ?」と、家を出て行ってしまった。
結局、買ったのか、買ってないのか。大学生にもなると、家族であっても、生活パターンがかなり違うため、カガリとはまともに話をしていない。
こっそりと嘆息するキラの隣で、アスランは黙々と作業を続けていた。
――まあ、アスランにとっては、カガリから貰えるものなら何でも良いんだろくけど……。
キラは知っているのだ。アスランの机の二番目の引き出しには、カガリが中学の時にプレゼントした――正確には、押し付けた――ペンが大事にしまってあることを。
もう流石に古くなって、インクが出ないはずである。書けないペンを後生大事に保管しているアスランの姿は、同情を禁じ得ないのだが、それでもアスランは良いと思っているのだろう。
――なんかもう、面倒臭いよね、この二人。
キラは、もう、どうにでもなれという気分になってきた。もともと世話を焼くタイプではなく、焼かれるタイプなのだ。
それなのに、慣れないことをしたから、妙に気疲れしている。
心配した所で、結局二人の間でバランスを保っているのだから、心配するだけ無駄である。
キラは、強引にそう結論付けて、再び雑誌に目を落とした。
【目次】
【あとがき】
携帯からアップしたものを、幾分か修正。
「バカップルの相手は疲れる」というお話。
キラの苗字がヒビキなのは、このシリーズの設定によります。(ちょっと違和感ありますね……)
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