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先日、某映画を見ていて、アスカガ変換したもの。


まあ、ただのネタです。(長いけど……)




◆◆あらすじ◆◆
アスラン・ザラは、「1.契約厳守」「2.(依頼人の)名前は聞かない」「3.依頼品を開けない」を信条とするプロの運び屋。
ある日、アスランは、大きなトランクケースを運ぶように依頼される。行き先は、同乗者である女が知っていると言う。
「俺は、タクシードライバーじゃないんだが……」渋るアスランに、依頼人は「では、乗客は必要ないな」と女を撃ち殺そうとする。
どうやら、今回の依頼はワケ有りらしい。アスランと謎の女の、命がけのドライブが始まった!






 

 マルセイユからミュンヘンへ――
 
 アスランは、愛車を西へと走らせていた。
 黒いアスランの愛車――アスラーダは、人気のない山道を、静かに通り過ぎていく。
 彼は、ちらりと隣に座る女を見た。彼女は、マルセイユで行き先を告げてからというもの、一言も口をきかないでいる。その印象的な琥珀の瞳をひたすらに前へと据え置き、意地でもアスランの方を見まいとしているようだった。
 そもそも、アスランはいつも一人で行動するのだから、沈黙は嫌いではない。
 だが、全身から異様な緊張を発している女を思うと、これから自分の身に何が待ち受けているのか、警戒せずにはいられないかった。
 恐らく、自分も女も、この依頼を果たせば殺されるのだろう。女は奴らの仲間と思っていたが、契約の際、彼女を殺そうとする男たちに、迷いは見られなかった。
 言ってしまえば、アスランと彼女の運命は、一蓮托生なのだ。できれば、彼女にもこの状況を打開すべく協力を持ちかけようとした時、バックミラーに二台の黒い車が映った。
 アウディA8――こんな田舎道では珍しい高級車だ。警戒を強め、バックミラーを注視すると、キラリと光るものが、映った。

 ――銃だ!

 アクセルを踏む右足に力を込めた。
 急に加速し出した車に驚いて、女が「何!?」と叫ぶ。
「追われている!」
「え!?」
 女が後ろを振り返った。
 気が付いたことが、向こうにも分かったのだろう。奴らは所構わず撃ってきた。一応、防弾はしてあるが、タイヤを撃たれれば一発だ。
 尚も、乗り出して後ろを振り返る女に怒鳴った。
「危ない! 身を伏せていろ!」
 広い一本道で、二対一はつらい。アスランはギアを四速に入れると、ハンドルを右に切り、舗装されていない森の中へと入った。
「っきゃあ!」
 凸凹とした道を駆け上がると、女の華奢な身体が跳ね、運転席の方へと倒れこんできた。
「――っ! だからシートベルトをしろと言ったんだ!」  
 右腕で支えてやりながら、彼女を助手席へと押し戻す。
 緊迫した車内に、ピピピピ……と、甲高い電子音が鳴る。奴らに渡された、GPSを搭載した受信専用の携帯だった。奴らはこれで、アスランを遠隔操作し、妙な真似をすれば、車を爆破させると脅してきたのだ。
「はい」
 インカムで電話に出たアスランに、静かな殺気を滲ませた声で、男が言った。
「ルートから外れているぞ、アスラン」
「あれはお前らではないのか!?」
「『あれ』?」
「二台のアウディに追われている! 止む終えず、森の中へ入った!」
「そう言えば、雑音が混じっているな」
「質問に答えろ!」
「……我々ではない」
「じゃあ、誰だ!」
「心当たりはある。私は、そちらを当たろう。君は、無事荷物を目的地まで届けてくれたまえ」
「おい!」
「『契約厳守』が君の約定だろう? 残念だが、今から仲間を向かわせても、そちらには三十分後にしか着かない。――尤も、特殊部隊に属していた君には、朝飯前のミッションではないのかな?」
「……俺を調べたのか?」
「当然だよ。これは、大事な仕事だ。私は、一流のものが好きでね。運び屋も一流を選んだというわけだ。では、健闘を祈るよ」
 男からの通信はそれで途絶えた。
 アスランは悪態を吐いた。
 後ろの二台を振り切るだけでなく、動けないようにしてやらなければ、また追われるだけだろう。いくつか手立てを考えたが、状態が悪い道での運転は、それを容易く実行するには至らなかった。

 すると、助手席の女が動いた。
 彼女はシートを倒し、後部座席へ移る。
「こら! じっとしてろ!」と、怒鳴ったが、今はアスランも運転に手一杯で、彼女を気にかけている余裕はない。
 彼女は身に付けていたベージュのトレンチコートを脱ぐと、窓を開け車から乗り出した。
「危ない! 撃たれるぞ!」
 怒鳴られても、女は止めなかった。
 彼女は、狙いを定め、後続の車のフロントガラスに向かってコートを投げた。コートは見事フロントガラスを覆った。
 その時、道の横――ちょうど女が腕を出している側に大岩が現れ、車幅を大いに狭めた。
 女はギリギリで手を引っ込めた。あと数瞬遅ければ、女の右腕はちぎれていたに違いない。
 コートで前が見えていなかった後続の車は、岩にぶつかり、クラッシュした。

 しかし、息を吐くのも少しの間のことだった。
 もう一台のアウディは、しぶとくアスランたちを追いかけてくる。
「ちっ! しつこい!」
 しばらく、銃弾に耐えながら、車を走らせていると、急に木立が途絶え、空が見えた。
「くそ! 行き止まりか!」
 この先は崖になっている。
「しっかりつかまっていろ!」
 後ろに声をかけ、急ブレーキを踏むと、ハンドルを左に切る。
 車体は、ドリフトしながら崖ギリギリで停止し、追いかけてくるアウディに向き合った。
 アウディは、アスラーダに向かって、突撃してきた。
 アスランもアスラーダを加速させる。
 あわやぶつからんとした時、アスラーダは左に大きく傾き、左側の車輪だけで走行した。
 浮き上がったアスラーダの右側の空間を、アウディはかすることも出来ず潜り抜け、崖下へと真っ逆さまに落ちていった。
 車体が水平を取り戻し、どすんと右側の車輪が地についた時、後ろで大きな爆発音がした。

 アスランは、車を止め、ネクタイを緩めた。ふう、と一つ溜息を吐いて、後部座席の女を伺う。
 よほど怖かったのだろう。先程は、無謀な行動に出ていたくせに、今は泣き出しそうな顔をしている。
「大丈夫だったか?」
 アスランの声は自然と穏やかなものになる。
 女は、ますます瞳を潤ませた。
 ――あ、とける……。
 それは、火に炙られたハニーキャンディが、とろりと蜜を零すかのように見えた。
 一度流れた雫は、さらに多くの雫を滴らせ、まろやかな頬を伝って流れた。
「……ううっ……」
 女は嗚咽を漏らし、アスランの胸に飛び込んできた。
 人は恐怖を感じると、子供に戻る。
 わんわんと、幼子のように泣く女を、アスランはその逞しい腕で、強く抱きしめてやった。


 ひとしきり泣いて、落ち着いたのか、女はアスランから離れた。
「すまない。スーツを汚してしまった。それ、クリスチャン・ディオールだろ?」
 ダークスーツの肩の辺りが濡れて、そこだけ濃い色に変わっている。
 女は先程まではとても頑なだったが、本当は、アスランのスーツを汚したことを気にかける優しさと素直さを持ち合わせているようだった。
「いや、トランクに換えがあるから大丈夫だ」
「換え?」
「ああ。同じスーツを、汚れないようにビニールでパックして、いつも五セットほど持ち歩いているんだ」
 だから、気にするなという風に言ってやると、彼女も笑みを見せた。
「今回の依頼品は、君だったんだな……」
 彼女が窓から身を乗り出したとき、男たちは彼女を狙わなかった。恐らく、アスラーダを停車させ、彼女を奪うつもりだったのだろう。
 女は頷いた。
「君の名前は? 奴らの目的は何だ?」
「名前は聞かないのが、お前のルールなんじゃなかったのか? 詮索は無用だ」
「ルールは、時と場合によって変化するものだ。君と俺は運命を共にしているんだ。協力する必要がある」
 女は、また、頑なになり出した。そこで、アスランは言い方を変えた。
「その傷は、自分で死のうとしたものか? だが、俺は死にたくない。俺は、君の問題に巻き込まれたんだ」
 女が、慌てて自分の左手首を隠す。先程までは、トレンチコートを羽織っていたので見えなかったが、五分丈のカットソーから除く細い手首には、無数のリストカットの痕があった。
「……お前には、悪かったと思ってる」
 彼女は俯き、「カガリ」と名乗った。

「私は、カガリ・ユラ・アスハ。オーブ連合首長国の代表首長ウズミ・ナラ・アスハの娘だ」
「オーブ……」
 ソロモン諸島にある小さな島国だが、高い科学技術力を持ち、GDP世界第五位の先進国である。特に、その柱となっているのは、宇宙産業と軍需産業であった。
「それで、敵は何が目的なんだ?」
 はっきりしたことは分からない、と前置きして、カガリは言った。
「明日、永世中立都市ウィーンで、安全保障会議が行われる。そこに、父も参加するんだが……」
「確か、オーブも中立ではなかったか?」
「そうだ」
 現在、世界の軍事同盟は、主にユーラシア大陸側と、北大西洋側とで分かれている。
「オーブの軍事技術が欲しくなったんだろうな。一月前、工廠に技術スパイが忍び込み、捕まったんだ。情報の流出は防げたものの、スパイの身元は分からなかった」
「それで、アスハ代表の娘を誘拐して、直接脅しをかけに来たというわけだな」
「……多分」
「それで、敵は、ユーラシアか北大西洋か、どちらか分かるか?」
 カガリは首を振った。
「ユーラシアの技術の方が遅れているから、ユーラシアと考えるのが妥当だけど……」
「北大西洋が、ユーラシアに渡すまいとしたとも考えられるからな。もしかすると、ユーラシアがオーブに接近しようとしていて、それに気がついた北大西洋が、手をうってきたのかもしれない」
 敵の目的は大体分かったが、正体は分からず終いである。
 アスランは、カガリから、別の手がかりを探るべく、質問を変えた。
「君は、いつどこでさらわれたんだ?」
「一週間前、乳母が入院していたから、見舞いに行こうとしていて。病室に向かう途中で、気絶させられた」
「見舞いに行くことを知っているのは?」
「アスハ家の者たちだけだ。急に思い立って、運転手に送ってもらった」
「……ということは、内通者がいたということか」
「彼らが、そんなことをするはずない! 大体、前から計画していたことじゃなかったんだ! 私の行動が先読みできない状態で、そんな計画を練れるわけがない!」
 カガリは、燃えるような目でアスランを睨み付けてきた。
 その『先読みできない』状態でさらわれたのだから、内部に裏切り者がいたということではないか。 人を信用するのは良いが、裏切られても信じているとは、人が良いを通り越して、馬鹿げている。
 今は、その者たちよりも、アスランの方が、よほどカガリの見方に近いのに……。
 ――何故、そんなに人を信じることができる。
 妙なイラつきが、アスランを苛んだ。
 
 そこで、彼女は、あっと声を上げた。
「ユウナ……」
「ユウナ?」
「首長の一人であるウナト・エマ・セイランの息子だ。年が明けて、留学から帰ってきたんだ。帰ってきてからというもの、私の周りをうろついていて……。一週間前も、食事に誘われたから、マーナの見舞いを理由に断ったんだ」
「そのセイラン家が、どちらかと誼を通じているという可能性は? 国防による中立なんて、そう簡単なものじゃない。オーブ本国でも、今の中立政策に反対するものは多いだろう」
 カガリは苦しげに頷いた。
「セイランは、軍事力で勝る北大西洋に組することを主張している」
「君の主張を信じれば、首謀者は北大西洋で、内通者は、そのセイラン親子ということになるな」
「でも、そんなこと、お父様も国民も賛成するわけがない」
 賛成しない、とカガリは言ったが、正確には『賛成できない』と言うのが正しいだろう。
 オーブは、ユーラシア最大の基地カーペンタリアに近い。つまり、北大西洋に組すれば、ユーラシアに真っ先に攻撃される。ユーラシアに組しても、北大西洋はオーブを取り替えそうと躍起になるだろう。
 オーブは中立であることが、一番望ましいのだ。

「それにしても、分からない。北大西洋も、馬鹿でなければ、オーブは中立のまま置いておきたいというのが本音なんじゃないか? 無駄にユーラシアを刺激する必要はない。何故、私を……?」
「ユーラシアが先に動いた可能性を排除すれば、――奴らは、火種が欲しいのかもしれない。
 武器は使わなければ、意味がない。大方、武器の需要を増やしたい軍需産業企業と、軍事費増加による国民の不満を逸らしたい軍の思惑が合致したんだろう。そのセイランとやらも、北大西洋から、幾許かの利権を得ているのかもしれないぞ」
 アスランも、数年前は、自分が正義のために働いているのだと思っていた。
 だが、本当は、馬鹿げたマスゲームの駒として、自分が操られていただけだった。
 そうして、退役した後は、アスランは運び屋として、自分だけのルールに従うことにしたのだ。
「そんな……。じゃあ、このままでは、オーブが焼かれてしまうということか!? やっぱり、お父様の邪魔にならないように――」
「だが、君は死ねなかった。違うか?」
 カガリの口から、その言葉を聞きたくなくて、遮るようにしてアスランは言った。
 その左手首の傷は、どれも浅い。いわゆる、ためらい傷というものだ。
「だって、私のせいでお父様が脅されていて……。お父様にも、お父様を信じてついて来てくれた者たちにも、申し訳が立たなくて……。でも、でも……私、怖くて……」
 女の瞳が、また潤み始めた。

 今度は、アスランの方から、カガリを抱きしめてやった。
 彼女は、先程とは違い、声をこらえながら泣いた。
 耳元でかみ殺した嗚咽を聞きながら、アスランはカガリを守ることを決意した。
 祖国を愛し、人を信じる彼女のために、アスランはもう一度、誰かのために戦うことにしたのだった。










【あとがき】
なんか、対立構造が東西冷戦っぽい(苦笑)
まあ、ガンダムというコンテンツそのものが、東西冷戦の対立構造の中でしか、そのコンセプトを発揮できないんだけれども……。 

アスラーダは、種デスに出てくるアスランの車。(監督夫妻の別作品サイバーフォーミュラにも出てくるらしいですが、そちらは見たことがないので分かりません。)
アニメでは、2シートのオープンカーでしたが、ここでは、アウディやBMWと似たような車だと思っていただければ。
つーか、外車のギアってどうなっているんでしょうか?左右反対になっているだけだと思うのですが、違ったら教えて下さい。


 

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いつかは、サイトになるはず……

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