種ガンダム(主にアスカガ)のブログサイト
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※アスカガ人間×悪魔パロ
『グレープフルーツ』
02.
深い、深いところから浮き上がるイメージ――アスランの意識は、今、深海から光が白く拡散する水面へと浮き出ようとしている。
瞼を上げると、光が急激に網膜に吸収され、膨大な情報を受け入れることを脳が一瞬拒否するのだが、もう一度瞼を閉じて開ければ、そこは見慣れた自分の寝室だった。
今日は、一週間の始まり。憂鬱な月曜日である。
恐らく多くの人に共感いただけると思うのだが、月曜日の朝というのは、実に気だるい。アスラン・ザラは、朝が極端に弱いので、さらに憂鬱度が高いのだ。
朝決まった時間に起きなければならないこと。必修科目である講義に間に合わせるために、満員電車に乗らなくてはいけないこと。作りかけのマイクロユニットに裂く時間が減ること。バイト先で、苦手な同僚と顔を合わせなければならないこと。そういった仕方のないことだが、億劫なことに足を踏み入れるだけの気力を、月曜日という曜日は彼に必要とさせる。
居心地の良い布団から出あぐねていると、ドアの開く音がした。
ここは、アスランが一人で暮らしているマンションであって、風か、建てつけが悪くてきちんと閉まらないという場合以外には、ドアは勝手に開かないはずである。
しかし、窓は完全に閉まっているし、この部屋のドアは、どれもきちんと閉まる。
勝手に開いたドアを気味悪がっていたら、人の足音が近付いてきて、アスランの上に何かが飛びついてきた。
「よっ! 目が覚めたか? アスラン♪」
あまりの衝撃に痛みを耐えるアスランの上で、金髪の少女が、その琥珀の瞳を輝かせている。
彼は、徹底的な実証主義者であると共に、幼い頃から嫌なことがあると、睡眠に逃げ込む癖があった。彼が心地良い眠りから覚めても、不愉快な現実は変わらない。やはり、昨日のできごとは、夢ではなかったようだ。
いつもの月曜日よりも憂鬱な現実がアスラン・ザラを待っていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お前、とっとと魔界とやらに帰れよ!!」
「だから、お前を不幸にするまで帰れない!!」
彼女の名前はカガリ。職業は悪魔。魔界からの辞令により、アスランを不幸にするために、この部屋に居候することになっているらしい。
嫌だ、認めないと言うアスランに、悪魔はこう宣うた。「受け止めろ! これがお前の運命(デスティニー)だ!」と――。
両者の主張は、平行線を辿り続け、一向に妥協点は見出されなかった。そのため、アスランは追い出したいが、カガリを追い出せず。カガリはアスランを不幸にしようと画策するが、容易にはアスランに近づけずにいた。
昨日から持ち越した問題を、今朝も言い争う二人。
その最中、くう~、と子犬の鳴き声のような音がした。カガリはお腹を押さえ、情けない顔をした。
「なあ、アスラン。おなかがすいた」
「ああ……待ってろ。すぐに食べられそうなものはあったかな?」
アスランはそこで、気がついた。どうして、俺がこいつの朝食を用意してやらなければならないのか――と。
悪魔のカガリは、順応能力が非常に高かった。言い変えれば、非常識なまでに図々しかった。そして、相対するアスラン・ザラはお人好しで、人付き合いがヘタクソなために、相手の言い分に押し切られてしまいがちだった。
結局、文句を言いながらも、根暗人間のアスランは、ドジな悪魔のカガリのために朝食の世話をしてやるのだった。
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