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※社会人パロ
『ご先祖様の言う通り』プロローグ
プロローグ
新年度から、社会人三年目の俺は、一つの決意をしていた。
それは、今住んでいる家を出て、もう少し出勤しやすい場所に引っ越そうという決意である。
俺の家は、良く言えば閑静な住宅街と言われる場所にあり、悪く言えば公共の交通機関にアクセスし難い場所にあった。実は褒められたことではないが、子供の頃から睡眠に関しては他人よりだらしがない。特に、朝は非常に弱く、今までも何とか気力を振り絞って起き上がっていたのだ。
だが、それももはや限界に近い。そろそろ任される仕事の量と責任が大きくなってきた社会人三年目の今、朝は始発に近く、夜は終電間際なのだ。もう少し近い場所、もしくは電車に乗りやすい場所に引っ越せば、この問題は軽減されるはずだ。俺は今まで慣れ親しんだ我が家から出ることを決意した。
けれども、引越しをするとなると、それなりに金がかかる。敷金、礼金、家賃、共益費、エトセトラ……
立地が良く、尚且つ安い家――しかし、残念ながら両者は両立しない。
休みの度に希望の物件を探しに、不動産屋を梯子していると、懐かしい顔に出会った。
キラ・ヤマト。
俺の高校・大学時代の同級生だ。友人の少ない俺にとって、一番仲が良かった友人かもしれない。
彼は、数年ぶりにあった俺に、年月を感じさせない親しさで話かけてきた。
「なになに? アスランも引っ越すの?」
俺は、仕事が忙しくなったため、もっと通勤に便利な場所に引っ越したいということをキラに告げた。
「ああ~。朝苦手だもんね~」
キラは俺の窮状を見透かして笑った。
「実は僕も家を出ようと思って。家賃って高いんだね。便利であればあるほど高いや」
俺も、その点に関しては深く同意した。全く、こんな高いところ、誰が好んで住むというのか。
「ねえ。アスランの勤務先ってディセンベル駅の近くでしょ? ってことは東西線に乗ればいいんだよね。僕の会社の最寄駅はユニウス駅だから、中央線に乗ればいいんだ。ここは一つ提案なんだけど、このプラント駅に近い家にルームシェアしない?」
プラント駅は、東西線、環状線、中央線、王武線の四つの線の連絡駅である。
キラが持っていた賃貸情報によると、築三十年の公共団地の一部屋で、最近内装がリフォームされてかなり綺麗になっているようだった。3LDK で、バスとトイレは別。プラント駅から徒歩十分の距離にある。そして、肝心な家賃は――
1800E$(アースダラー)!!
「家賃だけで、900E$か……。払えなくはないが、ここに共益費や光熱費、生活費が加味されるとなると、正直つらいな」
しかつめらしい顔で、渋る俺に、キラは人懐っこい笑みを浮かべて、その点はご心配なく、と言った。
「君と僕とカガリで折半すれば、600E$になるよ。実は、カガリと二人で暮らそうと思っていたんだけど、なかなか良い家がなくって」
カガリ? ――嫌な予感がする。
「カガリってお前の双子の姉じゃなかったか?」
「そうだよ。なんか文句ある?」
ある! あるに決まっている!!
「俺は――」
「『女が大嫌いだ』でしょ? 大丈夫だよ。カガリは君を好きになったりしないよ。結婚の話も出ている恋人がいるからね。そもそも、君に媚を売ったりするようなオンナオンナしたコじゃないし。それに、大事な嫁入り前の娘と同居させるんだ。君なら大丈夫でしょ?」
キラの言っていることは的を射ている。
自分で言うのも何だが、俺は女にとって、世界で最も安全な男であることを自負している。一般的な世の男にとっては、これは不名誉な称号となるのだろう。だが、俺にとっては大変な栄誉である。
俺は、極度の女嫌いなのだ。間違っても、マチガイなんて起こさない。
かくして、女と一緒に暮らすという若干の不安を残しつつも、これ以上の物件は見つからないという諦めもあって、俺はヤマト姉弟と暮らすこととなった。――――のだが、同居人がもう一人増えることになったのは、また後のことである。
【目次】 ≫ススム
【あとがき】
文章内でアラビア数字と漢数字が入り混じっているのですが、苦肉の策でして…(苦笑)
基本は漢数字ですが、アルファベットの単位が付く時は、アラビア数字にしています。